第4章 朋友 「sudden⑯」
隣国との国境に接する辺境に連絡を入れてもらった。
辺境伯は特に異常はないと返答した後に、国境の砦にも確認した上で再度連絡を入れると伝えてきた。
数時間後にもらった回答でも同じ内容だったため、俺は行動を起こすことにする。
これからの数日間は、メリッサに休養をしっかりととってもらう時間とするのに丁度いいだろう。そう思っていたのだが、この国の国王が俺とメリッサにすぐさま謁見を求めてきた。
何か新しい情報でももたらしてくれるとよいのだが、おそらく政治的なことだろう。そんな細事にかまうつもりはなかった。
とはいえ、アトレイク教会のビルシュ教皇と何らかの協議をしているため、無下にもできない。
そこで俺はマルガレーテにメリッサと同行してもらい、謁見に行ってもらうことした。
「いや、天剣様に来ていただきたいと陛下は仰せなのですが···。」
下手をすると、第三王女を使った色じかけでもするのじゃないかと思えた。
「マルガレーテは私の代理です。御用は彼女にお伝えください。」
「お任せ下さい。」
マルガレーテは即答だった。
王城からの使者は何とも言えない表情をしていたが、知ったことではない。
国王や上級貴族が相手だろうと、マルガレーテなら大丈夫だろう。何かあれば、巧みに殺気を放って相手を黙らせてくれると思っている。
本来、国王からの謁見依頼に対して俺が顔を見せないなど、不敬中の不敬だろう。しかし、そのようなことを素直に受けるよりも、先にやるべきことがあるのだ。
「て、天剣様···。」
このまま使者を返して罰せられるようなことがあれば後味も悪かったので、俺は国王たちが文句をいえない理由を語っておくことにした。
「貴国内にあるアトレイク教会でテトリアの鎧が消失しました。これについては、教会本部のビルシュ教皇に詳細を聞いていただくようにお伝えください。私は貴国が悪魔襲撃に巻き込まれないよう、迅速に対処しなければなりません。せっかくのお話ですが、今はそのために動いていると報告いただければ幸いです。」
「な、は···はい!承りました。」
今の話を聞いても謁見などと息巻くようならただのバカだろう。
俺は使者を返した後に今後の動きについて他の者に伝え、連絡手段についても打ち合わせた。
テトリアがどう動くか予想がつきにくい状況では、あちらに乗り込んでそれを確かめるしかなかったのだ。




