第4章 朋友 「sudden⑮」
結論から言おう。
テトリアは襲って来なかった。
かなりの日数を費やしたが、無事にこの国の王都に到着してしまったのだ。
それが悪いことでは決してない。
しかし、鎧を奪ったのが本当にテトリアだったのか、そしてその犯人が何を企んでいるのかが気になる。
これまでの奴の性格からすると、実体を持つことで深くは考えずに攻めてくるような単細胞であることは間違いない。
単純に鎧だけでは戦闘力を保持するのが難しいのかもしれないが、もし邪神がそこに関わっているのであれば、今後の展開がもっと大事になる可能性を秘めていた。
また悪魔や魔族を引き連れて襲いかかってくるかもしれない。
一番想定しやすいのはそのことだった。
「こちらは異常ないよ。ただ、そっちに襲撃がなかったのは気になるね。テトリアは複雑な戦略とは無縁の奴だったし、これまでのことを聞いていると君をそのまま放置するとも思えない。」
かつてはテトリアと同じパーティーで行動を共にしたビルシュだ。俺以上に奴のことは知っている。
「俺もそう思う。位置関係からすると、さらに南下して他の悪魔や魔族を連れ出すつもりじゃないかと思えるが。」
目的地についてからひとまず宿泊施設へと入り、パティに頼んでアトレイク教会本部と通信をつないでもらっていた。その前にはスレイヤーギルドにいるリルとも話しているが、そちらでも異常は見られないそうだ。
「それはありうるだろうね。ただ、そうなると君たちが今いる国への襲撃があるかもしれない。」
「そうだな。」
襲撃がなくても目撃はされるかもしれない。奴らも転移は使えるが、一気に遠距離を移動することは難しいはずだ。
あくまで鎧を奪ったテトリアが実体化しているのが前提だが、ここで撃退のための戦力を残すかどうかを考えなければならなかった。
仮にテトリアたちが大軍でこの国を通過するからといって、前回のようにあまり目立たずに来る可能性もあるわけだ。その場合、どこかの荒野か平原で待ち受けて、都市や街に被害が及ばないようにすることも選択肢としてはある。逆にこちらから攻め入った場合、最悪なのは行き違いになるケースだ。
被害をまったく出さないというのは、奴らがどういった行動を示すかでその可否はわかれてしまう。だからといって慎重になり過ぎると、行動に制限がかかり犠牲が出る結果になるかもしれなかった。




