第4章 朋友 「sudden⑫」
「どんな条件を出して話をまとめたんだ?」
「それは秘密だよ。」
この国に出した交換条件に興味はなかったが、ビルシュがどう答えるか聞いてみたかったのだ。
大した内容でなければ答えたかもしれない。教会も規模が大きくなれば国と同じように政治が絡む。条件はそういったものかもしれない。
「そうか。まあ、無事に切り抜けられたから礼は言っとく。」
「気にしなくていいよ。君なら別の形で切り抜けられただろうし、聖女候補を守ってくれたことには感謝してる。」
「それで、わざわざ連絡してきたということは何かあったのか?」
「まず避難してきた人たちは、その国の王都にあるアトレイク教会で保護する準備ができたから、そうして欲しいということだよ。」
「わかった。」
「もうひとつが厄介なんだけれど、その国にあるアトレイク教の支部に保管されていたテトリアの鎧が消失したらしい。」
「テトリアの鎧って、俺が持っている物以外にもあったのか?」
「そりゃいくつもあるよ。先の魔族との戦いはそれなりに長い期間だったからね。とはいえ、現存しているものは、君が所有しているものを合わせてふたつだけなんだけど。」
「その鎧があったのは、この国の王都にあるアトレイク教会ということでいいのか?」
「いいや、別のところだ。王都と今君たちがいる中間あたりに大きな商業都市がある。その国の二番目に人口が多い都市だから、教会の施設としても大きい。」
「盗まれたのか?」
「消失したんだよ。鎧は聖堂の中に展示されていたのだけど、ほんのわずかな時間で消えたそうだ。司祭がその場でお務めをしていたのだけれど、目を離した数分で消えたらしい。気になる音もしなかったそうだよ。」
「奴か···。」
「たぶんそうだね。この先、向かって来ると思うよ。」
「わかった。何とかする。」
憑依する体が見当たらず、かつて自分が装備していた鎧を使って実体化するつもりか。もういい加減にして欲しいものだ。
「今の話って、もしかしてまたあの人が襲って来るってこと?」
ビルシュとの通信を終えた後にパティがそう言った。
「多分そうだろう。他に思いつく犯人がいない。」
「もう何回目?」
「4回目かな。」
うんざりした表情をして答えているのは自分でもよくわかった。
思念体というめんどうな相手だけに、いつも苦労する。




