第4章 朋友 「sudden⑨」
数日間をかけて大きな都市に到着した。
それまでにも国境を越えてすぐのところにある衛兵の詰所や、小さな町に立ち寄りながら進んできたので、それなりの日数を費やしたのだ。
合間に休息を挟んだとはいえ、避難民たちの疲労の色は濃い。
長時間に渡って馬車の中で過ごしたことや、精神的な疲れが積み重なってしまったのだろう。中には気が緩んだことで熱を出す者もおり、この都市でしっかりとした養生が必要だと思えた。
「避難民の方々には、宿をひとつ貸し切って過ごせる場所を用意しました。体調の悪い方には治癒士がうかがうように手配しましたので、ひとまず御安心ください。」
「いろいろとありがとうございます。」
「メリッサ様と天剣様も今日は体をお休めください。支障がなければ、明日にでも隣国の対応についての会議を開きますので、ご出席いただければと思います。」
領主である辺境伯はそれだけを告げて屋敷へと戻って行った。
俺たちは避難民とは別の宿に間借りしていた。貴族などを出迎える格式のある宿泊施設だ。避難民のことを思えばあまり格差をつけて欲しくなかったが、断るのは好意を無下にしてしまうだろう。
メリッサとフェリにはすぐに休むように伝え、残ったメンバーで軽く話をする。
「メリッサ様とバードは教会本部を目指すということで問題ないか?」
「ああ、そのつもりだ。」
「3人はどうする?」
暗部の者たちに視線を向けてそう言った。
「俺たちも、できれば同じようにアトレイク教会本部を目指したい。あんたらの手伝いができればいいと思っている。」
「そう思う理由は?」
「母国があんなことになった。拠り所は信仰しかない。3人ともそれぞれに家族はいたが、敵討ちというには相手が強大すぎる。だからそれのサポートがしたい。」
束の間迷った。
私怨というのは強い感情である。表面的にはそれを意識させないようにつくろっているが、その気持ちはあって当然だろう。
「メリッサ様の警護や他の支援業務でもかまわないのか?」
メリッサ様の警護という言葉でバードが何か反応するかと思ったが、表情は変わらなかった。以前なら反発しそうな気もしたが、目の前の3人のこれまでの行動を見て信頼に値すると思っているのかもしれない。
「問題ない。」
暗部の男は他の2人に視線を送った後にそう言った。
「わかった。当面の目的はそれだな。」
それまでに起こるであろうことへの対処についても考えておかなければならなかった。




