第4章 朋友 「secession⑰」
念の為に目の前の男に暗部の者から預かった連絡文書を渡し、聞いていた符牒も伝えておいた。
途中で彼らと合流したことについては伝えてある。
「我が軍や国に仕えている者たちがいるなら、こちらに来るように伝えてくれ。彼らからも詳細を聞きたい。」
「わかりました。」
「あと、協力はしたいところだが我々も余裕がない。民間の者や聖女候補者についてはそちらで何とかしてくれ。」
それだけを言って男は立ち上がった。
要はあとは勝手にやれということだ。暗部の者たちは自国の軍と合流することになるだろう。
状況が状況である。
ここで無理に協力を依頼しても互いにメリットは見いだせない。
俺は所持品を返してもらい、出口へとゆっくりと向かった。
「なるほど。」
暗部の男にことの顛末を伝えた。
「今後どうするかは任せる。そちらが国境の砦で軍と合流するならそうしてくれればいい。」
「おそらく、あんたが会ったのはイハイヤ将軍だな。外観的特徴が一致する。しかし、将軍がなぜあの砦にいるのかが解せないな。」
「不審な点でも?」
「まあ、将軍ともなれば戦時中以外は王城を離れることは少ないはずだからな。国境の視察にでも出ていたのかもしれないが。」
あの砦からはソート・ジャッジメントに反応するよう存在は察知できなかった。
何かあるにしても、悪魔や魔族とは別件だろう。
「イハイヤ将軍というと、青髪の厳つい顔をした御仁か?」
「そうだが、将軍を知っているのか?」
口を挟んできたのはバードだ。
「直接は知らないが、王都での惨劇よりも前に教会を尋ねてきたことがあった。司教と話し込んでいたようだ。」
「その司教はどうなった?」
「わからない。惨劇のあった日には姿が見えなかったが。」
「そうか···。」
暗部の男が何かを考え込む顔をしていた。
「何かあるのか?」
「いや、今更だが司教様と懇意にしているのは聞いていた。イハイヤ将軍はそれほど熱心な信者でもなかったからな。何か特別な交友関係ではないかという意見があったのを思い出した。」
暗部らしく、不自然な行動と思ってやんわりとマークしていたのかもしれない。
「今回のことと何か関連がありそうか?」
「いや、まったくわからない。」
別の者が担当していたのかもしれない。
司教の行方も分からないのだ。今何かを勘ぐっても仕方がないことだろう。




