第4章 朋友 「secession⑪」
翌日、フェリの体調に問題がなさそうだったため街を出発した。
精霊馬車は狭いながらも避難民をすべて収容し、御者台に3人と屋根の上に俺が陣取る形になる。
早朝に暗部の者と一緒に精霊馬車には手を加えていた。両サイドにあったシートを片側だけ外し、残った方には体調の悪いものを座らせる。天井にはロープを渡し、立ったままの状態で乗車する者がつり革代わりに掴めるものとした。
本来は兵士の輸送に使われるものとして作られているため、通常の馬車と比較すると大型ではある。しかし乗る人数が多いため、余計なものを外してしまわないとまともな姿勢での乗車は難しいと判断したのだ。
屋根には体をホールドするための角材を釘で打ち込んである。骨格部分にしか釘を打ち込めないので数は少ないが、走行が不安定なときや狙撃時にしか使わないので問題はないだろう。
ルート選択は暗部の者に任せてあったが、俺とフェリが馬車を取りに行った砦の状況を説明するとそちらへ向かうことになった。
国境付近の砦については状況がわからないが、そのルートの方が確実だろうとの結論が出たのだ。
俺とフェリが通った限りでは脅威と思えるものはなかった。そして、立ち寄った砦から国境までの距離が短いということもある。
予定としては精霊馬車があった砦で一度休息をとり、その間に国境付近の偵察に俺が出向いて次のルートを確定するといった具合だ。
もし国境付近が危険な状態なら再考するしかないのだが、少しでも国外への脱出の可能性が高い方にかけるのは定石だといえるだろう。
地図を見ていて気づいたのは、国境の砦から北上していけばシェリルの親父さんたちが向かった都市までそれほど遠くはないということである。それに関しては、シェリルにも地図を見てもらい確証を得ていた。
「中にいる人たちはその国で落ち着いた方がいいと思う。」
シェリルがいうように、体力的にも精神的にもその方がいいだろう。これ以上行動を共にすると、いずれ衰弱する者も出てきそうだ。
日常とは異なる状況に身を置き続けると、体力のない者や精神的に弱い者はそうなることが多い。そうなってしまうと食事も受けつけず、手の施しようがなくなる可能性すらあった。
「そうするつもりだ。機会を見てメリッサには話をしておく。」
彼女がそれで納得するかどうかはわからない。しかし、それが避難民にとって最善というのは変わらなかった。そう説き伏せるしかないだろう。




