第4章 朋友 「secession⑦」
街へと戻るまではかなり時間がかかりそうだった。
まず、マトリックスで移動中に感覚で距離を測ってみたが、街までへの距離は150キロメートル前後といったところか。
当初、暗部の者から「馬で半日とかからないくらい」だと聞いていたのだが、そこで思い違いをしていたことに気づかされた。
馬は人を乗せた状態で時速60キロメートル以上で走れる。しかし、それは競馬などの競走馬の場合だ。暗部の男がいう馬とは、軍用馬などのことだろう。しかも、競馬場などの平坦な地面を走るわけではない。
そう考えると、こちらの常識でいえば時速20~30キロメートルが限界ではないだろうか。それに、馬は連続して半日も走り続けることはできない。暗部の者がいう半日とは、休憩時間を加味していない可能性が高かった。
結果的に想定よりも距離が短いため、大きな問題ではない。しかし、感覚が違っていたせいであまり余裕があるとは言い難かった。
俺の頭にある常識と、こちらの世界での常識のズレが思い違いを誘発させてしまったのだ。
精霊馬車での移動ともなると、その速度はさらに落ちる。しかも、精霊魔法は人の精神力をかなり消耗させるものだと思えた。
時速10~15キロメートルの速さで、かつ随時休憩を挟み150キロメートルを移動するとなると、丸2日はかかってもおかしくない。
かなりの余裕を見て往復で3日と言ったのが間違いではなかったということだが、そこで誰も疑問を挟まなかったことに気づくべきだったのだ。
下手をすると、フェリにとんでもない負担をかけるところだったと反省した。
マトリックスでの移動が時間を稼いだとはいえ、帰りは魔物などの襲撃の可能性もある。
俺は来る時に目星をつけていた地点との大まかな距離を計算した。
一度野営する必要があるのだが、それまでに数カ所で休憩を取らなければならない。
敵襲の可能性が少なく、休息が取れそうな地形を思い浮かべながら、最短距離となるようにフェリに進路を伝えることにした。
ここでのナビゲーション役で間違いをしてしまうと、方向が大きくずれてしまう。
簡易な地図を持参しているため、そこにマトリックスから見た目印となるものを書き込んでいく。
次にクリスと会う時には画像が撮影できるようなものを作成依頼しなければならない。
現実的に作れるかは別として、精度の高い地図を作るには、昔のカメラのようなものでも構わないから必要なのだと考えられる。
自分の甘さだとわかっているが、こちらの世界に対する認識がまだまだ甘いのだと思わざるを得なかった。




