第4章 朋友 「secession①」
何とか街にたどり着くことができた。
疲労困憊の者もいるため、広い空間がある建物を間借りして休憩を取ってもらう。
パティが食料を集めて簡単なスープを作ってくれていたので、みんなに配って食事をとってもらうことにした。
「すぐには動けなさそうですね。」
マルガレーテが状況を察して、別の部屋で今後の方針を建てることを提案した。
「移動手段を確保するしかないだろうな。」
暗部の男が地図を見ながらそう言う。
「精霊馬車を確保できるような所はないのか?」
俺がそう言うと、地図の一点を指さして口を開く。
「一番近いところで可能性があるのはここだろうな。ただ、この街と同じようにすでに誰もいないかもしれない。」
「ここには何があるんだ?」
地図には何も記されていなかった。
「軍が移動するときに使う砦がある。防衛ではなく資材や食料の保管庫のようなもので、規模はかなり小さい。」
「精霊馬車を軍が使っているのか?」
「この先をさらに行くと国境がある。そこにある砦は国境警備のためにそれなりの大きさがあるのだが、緊急時に行き来するためにこの保管庫を中継先にしているんだ。国境の砦にも精霊馬車があったはずだから、予備みたいなものだな。普段は使わないから残っているかもしれない。」
「その保管庫に駐留している兵士は?」
「普段なら2~3小隊が交代で詰めているが、今はどうだろうな。王都の異変で呼び戻された可能性もあると思う。」
「その際に精霊馬車が使われた可能性は?」
「ないとは言えないが、そういった兵士で精霊魔法が使える者はほとんどいない。国境に詰めている魔法士か、王都の宮廷魔法士にしか動かせないんだ。俺が記憶している中では精霊魔法士は国内に4~5人しかいないから、そのまま保管されている可能性もある。」
「ここからの距離はどのくらいある?」
「馬で半日かからないくらいだろう。」
2~300キロメートルといったところか。
「国境まではどのくらいだ?」
「その三分の一くらいだと思う。」
他に方法はなさそうだ。
「俺とフェリで取りに行こう。」
「そうしてくれると助かるが、どのくらい時間がかかりそうだ?」
バードが口を挟んで来た。
「最長で3日くらいはかかると思ってもらった方がいい。」
「その間はここで待機か?もし強襲されたら持ちこたえられないぞ。」
「マルガレーテは俺より強いし、シェリルとパティの2人もスレイヤーとして実力が高い。下手に動き回るよりも安全だと思うぞ。」
「そ、そうなのか?この3人が···。」
「強襲された場合は派手にやっても問題ないだろう。火力は俺なんかより上だ。」
魔法が使えると使えないでは戦いの質が違う。それに相手が悪魔だろうと、大軍で押し寄せて来なければ対処はできるだろう。
彼女たちも加護者と準加護者なのだ。




