第4章 朋友 「blassreiter⑯」
「タイガ様、よくぞご無事で。」
俺が戻ってきたのはシニタの教会本部の方である。
「ああ、ちょっと一時的に戻ってきた。」
「顔色がすぐれませんが、転移で間を置かずに戻られたのですか?」
「うん、まぁ···。」
吐き気と頭痛がひどい。
しかし、悠長にしている時間はなかった。
「マルガレーテとシェリルに来てもらいたい。」
「いつでも行けます。」
マルガレーテは即答だった。
心なしか笑みが漏れている気がする。
「え、私は?」
近くにいたマリアが不服そうにそう言った。
「実はシェリルの親父さんと会う機会があった。」
俺は経緯を話した。だが、シェリルの親父さんや彼が契約している国らしき所からは、未だに連絡が入っていないようだ。
「その辺りの国はこちらとは国交がないと思うわ。それで私に父と連携を取れということ?」
「いや、連携というよりも土地勘があるなら頼りたい。その国がどこかわかるようなら、最悪の場合に避難民の受け入れ先になってもらいたいと思ってる。」
あの近隣に受け入れ先がない場合は、距離はともかくとして、そこを目指すことも考慮に入れたかった。
「なるほどね、かまわないわよ。」
「ちょっと、タイガ。私も行きたいんだけど。」
マリアは不機嫌だった。
「マリアにはここを守ってもらいたい。頼めるのはファフと君だけだ。」
「···仕方ないわねぇ。その代わり、早く帰って来てね。」
拗ねた態度はただのポーズだろう。マリアは正義感も強く、分別がある女性だ。
「ツンデレって、かわいくみえるものね。」
シェリルが妙なことを言い出した。
「ちょっ、シェリル。」
「マリアさん、そうやって誑かそうとするのはダメですよ。」
マルガレーテが笑顔でそう言った。
目は笑っていないがいつものことだ。
彼女を超えられるツンデレは存在しないだろう。そして、そのツンが俺には怖すぎる。
「ビルシュは執務室にいるのかな?」
とりあえず、彼に用があるのでそうたずねた。
「さあ、興味ないから。」
「どこかでふらふらしてるんじゃない?」
あまりつきあいがないのにえらい言われようだ。
まあ、原因は本人にあるのだろうが。
「そうか、聖女候補が無事とは朗報だね。」
予想に反して、ビルシュは真面目に執務を行っていた。
「今からまた戻るつもりだが、彼女に何か伝えたいことは?」
「特にはないかな。ただ、君には彼女があまり重荷を背負わないようにお願いしたい。」
暗に避難民を死なせるなと言っているのだ。
「善処する。」
メリッサにあまり精神的な深手を負わせたくないのだろう。教皇らしい振る舞いだが、普段の彼を知っていると何か拍子抜けするものがある。ただ、それだけ状況がひっ迫しているともいえた。




