第4章 朋友 「blassreiter⑮」
再スタートした。
人が減った分、わずかだが燃費も良くなっただろう。それに、先ほどよりも小舟のスピードも出ている。
徐々に傾斜が強くなっているため、あまり距離は稼げないが時間短縮にはなるだろう。
特に障害は発生せず、予定の場所へと到達した。
問題はここからの陸路である。
「この付近に都市などはないのか?」
「小さな街はある。そこが無事なら休息に使えるのだが。」
暗部の男がいう街は、少し北上した位置にあった。
地図には主要な都市しか載っておらず、おおよその場所を確認して先行する。
正確な距離はわからないが、徒歩なら数時間はかかるだろう。
マトリックスで街へと向かった。
わずかな時間で到着するが、予感していた通り街には異変が起きている。
幸いにも襲撃された形跡はないが、もぬけの殻なのだ。
おそらく、誰かが王都から生きのびて話を広めたのだろう。あわてて荷造りをして出ていったような形跡がそこら中に残っていた。
馬車などの移動手段も残っておらず、避難民の移動を手助けできるようなものは見当たらない。
ひと通り街中を調査して、次の行動について考えた。
陸路を通るルートは弊害も多い。
悪魔や魔族、魔物だけが脅威ではないのだ。
盗賊の類がいるかもしれない。場合によっては、他国の兵士が出張ってきて、調査の名目で略奪をしているといったケースも可能性としてゼロではなかった。
俺はマトリックスで一度戻り、上空から移動する避難民たちの様子を見る。
足取りが重く、行進のスピードが遅れているようだ。
このままでは、いざという時に逃げ遅れてしまうこともあるだろう。
近くの丘陵まで行き、マトリックスを着陸させた。
少し早いが、奥の手を使うことにする。
そう、援軍を呼ぶのだ。
こちらに向かっている途中で目星をつけていた地点を、いくつか経由して転移を繰り返す。
体感時間は一瞬だが、距離が長くなると耳鳴りや頭痛、吐き気がひどくなる。
体の状態が悪くなると数分程度休んで再び転移した。
累計時間としては20~30分といったところか。
何とか目的地に着くことができた。
問題は、人を連れて再び転移を繰り返すことである。人が増えると負担もそれに比例して大きくなる気がしていた。
しかし、そんなことを今更言ってはいられない。
俺は見慣れた建物に入っていった。




