第4章 朋友 「blassreiter⑪」
船着場に戻り、帆船の喫水線を調べてみた。
危惧していた通り、川の水深が5メートルだとするとかなり厳しいようだ。
もともと酒樽を搬送するための船である。空荷なら問題はなさそうだが、人の重量を考えると何ともいえない。
酒樽はそれなりの重量がある。もとの乗車定員が操舵に必要な最低人数だとすると、今回の乗り込み人員はその4~5倍になるのだ。酒樽の積載数にもよるが、喫水線は満載の時を想定した方がいいだろう。
「このタイプは横幅もあるからな。川をさかのぼるのは厳しいんじゃないか?」
中流域まで進んだとして、その川底に岩や流木がないとも限らない。そもそも、氾濫を避けるための落差工が設けられたりしていると、お手上げなのは違いない。
「そうだな。選択肢は河口に向かって進むしかないか。」
「タイガ、あっちにある船じゃだめなの?」
近くで様子を見ていたルルアが、船着場の上流側を指さしてそういった。
「どの船?」
ルルアが先に立ち、船着場の端の方へと歩いて行く。
造りは簡素だが、資材を運搬するための小船が繋留されていた。海へと向かうことに意識を集中し過ぎて、見落としていたようだ。
同じタイプのものが4艘ある。
「これは1艘で何人まで乗れるんだろうか。」
元の世界のように乗車定員などは表記されていない。
「十人くらいは問題ないだろうな。これはたぶん、端材を運ぶ船だろう。」
「木の端材か?」
「ああ、木片や木くずが船内に落ちてる。工芸品や家具を作るための素材を搬送してくる船だろう。」
端材といっても、大きさや重量は様々だ。一艘には大きな切り株が載っていた。その船の喫水線を確認したが、空荷のものと大して変わらないようだ。
帆船などに比べて、船底の形状が平らなことが理由かもしれない。
海の強い波には対応していない。しかし、その恩恵として重量がかかっても喫水が下がりすぎることもないのだろう。
「上流に向かうなら、これを2~3艘使う手があるか。」
動力は魔石で賄うようだ。スピードは出ないだろうが、そこは仕方がないだろう。
「こちらは3人とも操舵できる。3艘使えるぞ。」
「リスクが低いのはどちらだと思う。」
「この船なら中流域までさかのぼれる。その先については状況を見てからだが、ルート的には安全だろう。」
ここは土地勘のあるものに任せることにした。
あとは、魔石が想定距離分確保できるかが問題だ。




