第4章 朋友 「blassreiter⑨」
船着場へと行くと、そこにも少ないながらも悪魔憑きがいた。
危なげなく倒して行き、気配を感じなくなってから手頃な船がないか探してみる。
それほど大きな船はなさそうだが、一艘だけ搬送用のものを発見した。
中を確認すると、船内の倉庫は微かに酒精の匂いがする。酒樽を積むための船だろう。
人数を考えると少し大きめだが、外海に出ることもあるためこれくらいの方が安定するだろう。
問題は操船できるものがいるかどうかだった。
帆船の造りをしているが、他に動力源となるものがないか確認してみる。帆だけで動かすとなるとひとりでやるわけにはいかず、航海士でも乗船していないことには緻密な操舵は難しいだろう。
俺は操船の経験もあるが、この手のタイプは操ったことはない。最悪の場合は川の流れに乗ってくだり、河口付近で降船して他のルートを探す必要があった。
操舵ができないのに外洋に出てしまうと高確率で海難事故にあう。しかも陸路の乗り物と違い、スピードもそれほど出ず制御も緩慢なのだ。かなりリスキーな行程となってしまうので、できれば避けたいところだった。
操舵用の舵輪横には何かの操作パネルがある。
かなり簡易的なもののため、何のためのものかはわからない。
船内は二重底の造りとなっている。座礁に備えるためではなく、単に倉庫として使っているようだ。階下におりて隅々まで調べてみた。
結論として、十人ほどで漕ぐ櫂と魔石による動力源を見つけた。人力で動かせるのであれば、天候さえ穏やかなら近海でも何とかなるだろう。問題は魔石による動力源だ。魔石を入れるボックスの様なものを見つけたが中は空だった。船着場近くの建物にあるかもしれないので、そちらを探すことにする。
周囲の建物を探っているうちにメリッサたちが到着したようだ。
俺は魔石の捜索を一度切り上げてそちらへと向かった。
「ご無事でなりよりです。」
「そちらは何もなかった?」
「はい。」
メリッサの顔色は悪かった。
倒れている悪魔憑きを何体も見て胸を痛めているのだろう。
非情なようだが、そういったことは今後も続くかもしれない。年齢を考えれば酷なことだとは思うが、心を強くしてもらうしかないだろう。
俺はメリッサの頭を撫でて労ってから、暗部の者たちがいるところへ向かった。
操船できる者がいないか確認しなければならないのだ。




