第4章 朋友 「blassreiter⑦」
後ろからまわりこみ、悪魔憑きと呼ばれる者たちを観察した。
これまでに見た魔人や悪魔化した者とは異なり、緩慢な動きをしている。
例えるなら、パンデミックで人を脅かすゾンビになった者たちを題材にした、映画のワンシーンといったところだろうか。
暗部の者たちの話では、動きは遅いが力は強く、人を見ると群がってくるという話だった。
おそらくだが、魔族や悪魔の血を体内に入れたことにより、脳死状態となっているのではないかと思える。
思考は完全に停止した状態ではあるが、血液中に入り込んだ邪気が本能的な動きで人を襲うのではないかという仮説だ。
悪魔と同様の核が形成されていなければ、それほど対処が難しい相手ではないだろう。
ただ、避難民の中には顔見知りがいる可能性があり、そうでなくとも同じ国で暮らしていた同郷の者たちである。
素早く最小限の攻撃で終わらせる方が、彼らにとって精神的な負担も少ないと思えた。
ここでは銃器は使えない。
同じ倒すにしても、あまり体が損壊しない手段を選ぶべきだった。
両手に警棒を持ち、勢いよく振って最長まで伸ばす。
竜孔を活性化させながら、ゆっくりと悪魔憑きへと近づいて行った。
こちらを視認したのか、気配で察知したのかはわからない。
一定の距離まで近づくと、悪魔憑きは一斉にこちらに体を向けて歩み寄ってきた。
俺は竜孔流を警棒へと流しながら、すれ違いざまに上体へと叩きこんでいく。
魔法障壁すら存在しない悪魔憑きは、両手をあげて向かってくるが単調な動きに過ぎない。
次々に襲い来る個体に攻撃を入れ、囲まれたり掴まれないように移動する。
目に見える範囲にいる悪魔憑きは、それ以上増えることはなかった。
最後の一体を倒すまでに要した時間は10分に満たないだろう。倒れて動かなくなった悪魔憑きを一体ごとに確認し、無力化できているかを確かめた。
ここから先に進めば、また同じことを繰り返す可能性が高い。
俺は一度みんなのところに戻り、先行することを伝えた。
ここから船着場のある都市まではそれほど距離もないはずだ。先に進んで同様の悪魔憑きを排除していくことが必要だと感じたのである。
時間差で出発するように伝えていたため、しばらく進むと他の者の視線を気にすることはなくなった。
俺はマトリックスを顕現させ、低空で飛んで先を急いだ。




