第4章 朋友 「blassreiter②」
いつの間にか、断続的に続いていた音が消えていた。
都市跡から数キロメートル離れた辺りだ。
正確な距離はわからないが、音が届かない位置まで来たのかもしれない。
時間にすると、出発してから2時間前後というところだろうか。
教会があった都市からはそれ以上に離れている。
しかし、ルルアは胸騒ぎを感じていた。
タイガが陽動に失敗したかはわからない。
彼は転移術が使えるらしく、最悪の場合は戦いの場から離脱すると言っていた。だが、知らない場所への転移は難しいらしく、そう多用できないとも聞いている。
無事を祈りながらも、今この場で何かの脅威が迫っている可能性を考えてみた。
胸騒ぎの原因のひとつは、爆破や破裂音が聞こえなくなったことである。しかし、それだけではない。
ルルアが持つスキルに何かが触れたのだと思う。
詳しくはわからないが、人の意思とは異なる悪い念のようなものを感じているのではないだろうか。
あまり経験のない感覚だが、例えれば怨念や残留思念といった概念のないものを感じている気がした。
しかし、そういった類のものが、この辺りにいるとは聞いたことがない。
もし想像しているようなものが正解なら、それはアンデッドの類である。そして、そういったものが存在するなら、聖なる力を持つ聖女候補であるメリッサが真っ先に気づきそうなものである。
ルルアはメリッサに視線をやった。
軽く息を乱れさせながらも、疲労で動きが鈍くなった老人に手を差し伸べている。
そしてルルアと目が合った彼女は、こちらを見て不思議そうな顔をするだけだった。
聖職者が気づいていないというのは、不安の正体がアンデッドではない可能性が高い。
しかし、そうなるとますます不安が大きくなった。
ルルアが頭に思い浮かべたのは、瀕死の人間が強制的に魔族化させられ、さらに適性のある者は悪魔化したという話である。
犠牲者に理性は残っていたのだろうか。
もし人としての分別があったなら、これまで同じ都市で暮らしていた者を虐殺するような真似をしたとは思えなかった。
しかし、万一人間だった頃の思念が少しでも残っていたなら、恨みや辛みがそういった思念に変化したりはしないのだろうか。
あまり情報を持っていないルルアにとって、その思考が正しいかは判別できない。
よくわからない不安が押し寄せ、胸が苦しくなるような感覚を味わうだけだった。




