第4章 朋友 「annihilation⑪」
暗部の3人が潜んでいる近くに転移する。
意外なことに、メリッサは俺の提案をすぐに受け入れた。理由は聞いていないが、バードも反論しなかったところを見るとメリッサの俺に対する信頼は神託の影響で強いのかもしれない。
メリッサの返答時にバードは軽くため息を吐いていた。他に最善策がないと考えたのか、盲目的にメリッサを崇拝しているかのどちらかだろう。どちらにせよ、これ以上地下に潜っているのは食料や精神的な問題で厳しいことに違いない。
ルルアに関しては俺の身だけを案じてくれていた。短い間しか共に行動していないが、ルルアの固有スキルが立場や経験において彼女に辛い思いを強いていたのは理解できる。そのスキルが俺を安全な存在だと認めたからかもしれない。彼女のメリッサに対する優しさも似たような影響であると思われた。
気配を読み、3人の位置を捉える。
相変わらず巧妙に気配を消している。
しかし、近づいてきたのが俺だとわかったからか、その気配が揺れた。
「出てきてもらえないか?力を借りたい。」
俺がそう言うと、3人は示し合わせたように姿を現した。
「そうか。聖女候補は無事だったんだな。」
一番体格のいい男が答えた。
「少数ならともかく、それなりの人数だ。避難している場所から抜け出すのを手伝って欲しい。」
俺は状況や避難している人数を共有した。
疑うわけではないが、教会からの脱出ルートについては濁している。
「状況はわかった。しかし、50体以上いる悪魔に包囲されているのだろ?」
「そうだ。だから俺が奴らを引きつける。時機を見て可能なら彼らを誘導して逃げて欲しい。」
「どこに逃げるというんだ?」
逃走先については明確なあてはない。
とにかく現地から距離を置き、可能であれば他国に避難させてもらうしかなかった。
「おおよその位置だが彼らはこの辺りにいる。古い都市跡だと思う。ここからの逃走ルートについては、地の利がある者の意見を聞きたい。」
地面に描いた地図を4人で取り囲む。
随分と無茶振りしているが、暗部に属する者ならこの程度の策は練れるだろうと考えていた。
「人数を考えると陸路は厳しいな。追っ手が来たら大半が命を落とすだろう。」
「こちらに迂回すれば小さな街があるわ。ただ、既に壊滅されてる可能性が高いけれど。」
「しかし、そこにとどまっている可能性は低い。」
俺は黙って3人の意見を聞いていた。
話に出てきた街は川沿いにあり、内陸からの物資を輸送する中規模な拠点になっているらしい。
大人数が乗り込める船があるかはわからないが、そこで船を調達後に海から逃走するルートが有力なようだった。




