第4章 朋友 「annihilation⑦」
間髪入れずに先ほどまでいた方角から気配を感じた。
嫌な予感に突き動かされて横へと跳ぶ。
体を回転させながら、左腕を上げてHG-01の引き金を絞る。
轟音が空間に鳴り響く。
俺の横を光線のようなものが通過するのが視野に入った。
新手からの羅術だ。
床に背中から落下する。
すぐに両足を跳ね上げて、回転させた勢いで立ち上がった。
放った銃撃は相手の肩をかすめただけのようだ。改めて狙いをつけようとするが、こちらを視認して戦闘モードに入った悪魔は、尋常ではないスピードで動いていた。
さすがにHG-01の火力を警戒したのか、間合いを詰めずに広間の壁際を移動している。
かすっただけとはいえ、大口径のマグナム弾を受けて体勢が崩れないのはさすがといえよう。
「あの羅術は斬れるか?」
聖剣ライニングに問うた。
それができれば正面から突っ込むつもりだ。
『知らぬ。試されたことはない。』
返答は素っ気ないものだった。
まぁ、そうだろうな。
そう思いつつ、ジグザグを描くように間合いを詰めた。
人差し指でこちらをさして、再び羅術を放とうとしている。
不敵に笑ってみせた。
それに警戒を強めたのか、悪魔は羅術を使わずにこちらと同じような動きで急迫に転じる動きをする。
浮かべた笑みはフェイクだ。
他の悪魔が倒されたことがわかっているからこそ、目の前にいる奴は簡単にそれにひっかかったといえる。
これまでの経緯を考えると、圧倒的な力を持った悪魔らしからぬ動きだとも思えた。
もしかすると、目の前の悪魔は元人間なのかもしれない。
HG-01をベルトに突っ込み、ワイヤーを外して背中にある鞘を悪魔に向けて投げる。
ほんの一瞬だが、相手の視線が鞘へと移った。
早撃ちの要領でHG-01を引き抜き、鞘のすぐ下を狙って引き金を絞る。鞘によってわずかな死角を視線の中にもたらせたのだ。
跳躍してそれを避けた悪魔に向かってナイフを投げた。
踏み込みのタイミングで避けれずに、ナイフを腕で薙ぎ払った相手との間合いを詰めた。聖剣ライニングを、鳩尾の下にある腹部リンパ節に突き刺して抉る。
一瞬白目を剥いた悪魔は、ゆっくりと膝から崩れた。
二体の絶命を確認した俺は、すぐに気配の少ない方の通路へと走る。
別の個体と距離を置いた地点で一息つく。
こういった戦いはひどく神経をすり減らす。
銃声により位置を把握され、囲まれるようになれば厳しい状況に陥る。
動きが制限される空間では、個別撃破できる状態で動いていかなければ死しかないのだ。




