第4章 朋友 「annihilation⑤」
聖剣ライニングの効果は、浸透するというよりも劇薬のようなものだ。
琳巴を伝ってというよりも、そこに触れた瞬間の即効性には目を見張るものがある。
竜孔流を纏わせた攻撃でも効果は絶大だが、反応からいえばそれ以上だろう。
「これはどういった効果だ?」
『波動だと言っただろう。我を創成した主は、この世のものではないものを淘汰させるための力を与えたのだ。』
「それは神に対しても同じなのか?」
『所有する者の意思に依存する。抹消したいと思う相手が対象なら、それを滅殺する効果を発揮すると思えばいい。』
振るう者の意思で相手に致命傷を与える剣ということか。
「それは相手の弱い所を瞬時に導きだして破壊するというものでいいのか?」
『そういう解釈で間違いはない。ただ、正善たる相手に対しては効果は出ぬ。』
「琳巴がどうというのは、どの相手に対しても同じなのか?」
『人型であれば似たようなものではある。悪魔や人間は体の造りが似ておるからな。』
人に対して振るうことはあまりないだろう。過剰な力という以前に、人の血をライニングに注ぐようなことには抵抗を感じる。
この剣は魔剣や聖剣というよりも、神具に近いものではないだろうかと思った。
かつて悪魔王が所持して魔剣として振るわれたというが、同じ悪魔などに対してはともかく、人間に使うには力が大き過ぎる。
天魔ディアブロが人外を相手にするために創成したと考えれば、やはり神剣とでもいうべきではないだろうか。
そこでふと気がついた。
天魔が創成したというならば、神剣よりも天剣というべきではないか。アトレイク教の教皇であるビルシュが提唱していたものに、同じ名称のものがあった。共に古い時代から存在していたとすると、そのふたつに関連性があるのではないかと思ってしまう。
「かつて、天剣と呼ばれたことはなかったか?」
『ほう、何かと結びつけたか。確かにそう呼ぶ者もいたかもしれん。』
聖剣ライニングは、それ以上詳しい内容を語ってはくれなかった。
しかし、否定したわけではない。
可能性としてだが、この考えが正しければ見えてくるものがある。
ここでの活動を終わらせたら、ビルシュに確認するべきかもしれない。
それで何かが解決するわけではないが、先の見えない戦いの突破口がどこかに存在するかもしれないのだ。




