第4章 朋友 「annihilation②」
蒼龍ではなく、ナイフを取り出して左手に持った。
通路の広さを考えると、丈のある大太刀よりもナイフの方が扱いやすい。
どちらにしても、接敵した場合は相手の羅術を警戒しながら倒す必要がある。近接戦に持ち込むか、射程範囲であれば弾丸を撃ち込むことが最も有効だろう。
SM-01の連射に竜孔流を纏わせるのは難しい。しかし、そのためのハイドラショック・ディープの破壊力である。
全長30センチメートルに満たない銃身で、取り回しのしやすさには定評がある。拳銃とそれほど違わないサイズでありながら、弾薬の装弾数や連射速度、動作不良の起こりにくさは建物内で敵を無力化するにはうってつけなのだ。
ベースにしたイングラムM10には、さらにコンパクトになった後継モデルのM11がある。しかし、そちらはボルトの後退距離が短くなったことで、弾薬が変わり威力がおちてしまう。連射速度こそ早くなったものの、対悪魔用としては火力に不安が残るといえた。
また、シンプルな構造であらゆる状況下でも壊れにくいという特徴がある。アメリカ特殊部隊で、長年に渡りモデル名MAC10として使用された実績もあった。
気配を読みながら足を進めていく。
一番近くにいる敵を対象として接近し、通路の壁に体を寄せて目視ができる位置まで移動した。
曲がり角に身を隠して相手を確認するが、気づかれずに接近してナイフで動きを止めるのは難しいようだ。
周囲の暗さは夜目がきけば問題ない程度のものである。直線通路の中央辺りにいる悪魔に仕掛けるには、今の距離から対処する方が確実だといえた。
銃声が鳴り響けば他の敵にも警戒を与えるが、それに気を配っていては殲滅するのは難しいだろう。
SM-01の発射音はそれほど轟音ではない。乾いた路面をスニーカーで走るような音が鳴るだけである。銃器が存在しないこの世界では、何の音かもわからずに警戒されにくいとも思えた。
標的の視線が逆を向いたタイミングで、半身を覗かせて引き金を引く。
タタタッという音が短く鳴り、悪魔の上半身にヒットした。
ハイドラショック・ディープの破壊力で風穴が空く。
うまく核が破壊できたのか、悪魔は体を制止させた後にスローモーションのように倒れていった。
銃口を向けたまま近寄り、絶命しているのを確認する。
ソート・ジャッジメントには、こちらへと移動を始めた敵が反応していた。




