第4章 朋友 「annihilation①」
時間は夜明け近くだろう。
階段を上がっている途中で、少し闇が和らいだ印象がある。
地下のじめっとしたものとは異なり、少し乾燥した空気が肌を打ってきた。
間違いなく地上階に近づいている。
そして、ソート・ジャッジメントで感じていた邪気が、気配としても明確に現れていく。
認識できる敵の数は二桁近い。
距離を考えれば、それほど遠くにいるわけでもなさそうだった。
『結構な数がいるぞ。どうするのだ?』
聖剣ライニングも同じように察知しているのだろう。
「みんなを逃がすためには、殲滅するしかないだろう。」
『できるのか?』
地上階の大きさにもよるが、推測として敵はいずれも建物内にいる可能性が高い。
階段の一番上まで上がりきり、周囲を観察した。
間近には敵の気配はない。
広間はともかくとして、通路の幅は3メートル程度といったところか。天井高も同じくらいだ。
「やるしかないだろうな。」
建物内で戦うなら、こちらの方が有利だと思えた。
悪魔や魔族は相対的に俺よりも体が大きい。
何らかの武器を使うならば、この空間の狭さは互いに障害になりやすい。
魔法はともかく、悪魔の羅術は警戒が必要だ。入り組んだ場所を選べば、防御壁や死角をつくることができる。
そして、無手とナイフによる近接戦や銃器を使った市街戦と仮定すれば、状況はこちらの方に有利に働く。
聖剣ライニングが収納できないのは邪魔でしかないが、どこかに放置して奪われるわけにはいかない。広い空間で戦うようなことがあれば、その能力を試してみるのもありだろう。
俺は空間収納から一丁の銃を取り出した。
クリスに依頼していた9mm短機関銃。
最強クラスのストッピングパワーを持つホローポイント弾。ハイドラショック・ディープを模した弾薬を使用するSM-01だ。
モデルにしたのはイングラムM10である。
サブマシンガンは、拳銃弾を連射するいわば弾幕をはるための安価な銃として開発された。
その背景から一時期はあまり注目されない銃器となっていたのだが、アサルトライフルの小型化に限界がきて再注目されるようになっている。
近年のサブマシンガンは、ピストル・キャリバー・カービンとして作られるモデルが増えてきた。
従来のフルオートで弾をばら撒くサブマシンガンとは異なり、セミオートで高い精度の射撃ができる口径の大きなカービンという位置付けだ。
当初はその先駆けともいえるH&K M5をベースにしようと考えていたが、ボルトの構造が複雑で実現するのが難しかった。そのため、構造が単純で作動不良が少ないイングラムM10のメカニズムを採用することにしたのだ。
発射速度が非常に速いが、セミオートとして使うため扱いにくさはほとんどない。
その弾薬にハイドラショック・ディープを用いることで、9mmの口径でありながらより高い威力を実現させている。




