第4章 朋友 「Getaway⑰」
「ライニング、最近ここに悪魔や魔族が入って来なかったか?」
そろそろ行動に移らなければならない。
しかし、その前に脅威となるものは取り除いておいた方がいいだろう。
『何日か前に近くまで来た。ここへ来る途中に引き返していったがな。』
「そいつらを呼び寄せようとは思わなかったのか?」
『奴らは出来損ないだ。そんな奴らに我を振ってもらおうとは思わん。』
出来損ないというのは純粋な悪魔ではないということだろう。悪魔化した元人間であると考えられる。
「ここから出してもらえたかもしれないぞ。」
『確かにそういった機会は少ない。しかし、あの者たちでは我を使いこなすことは叶わん。最低でも奴らを束ねる長でなければ、ここから連れ出してもらおうとは思わなかった。それに、そんな者では我の正体に気づくこともなかったであろう。』
「俺は良いのか?」
『そなたは面白いからな。他の者にはない力を持っておる。それと、異質ではあるが剣の腕前は相当だと思えた。』
「そっちがかまわないならいい。力を貸してもらうぞ。」
『よかろう。』
剣帯を持っていないため、左手で所持することにした。
「ルルア、みんなのところに戻ってこちらに誘導してもらえないか?」
「あなたはどうするの?」
「先行する。あの足跡をつけた奴らがまだ近くにいるかもしれない。先に倒してしまった方がいいだろう。」
少しの間こちらに視線をやっていたルルアだが、それが最も適した行動だと思ったようだ。
「わかった。」
ルルアはこくんと頷いた。
彼女なら無事にたどり着けるだろう。俺たちがこちらに来ている間に、再び悪魔が通路内に入った可能性は低いが、もしもの場合は無茶はしないだろうと思えた。
俺はルルアと一緒に来た道を戻る。
今度は明かりを点つけるのをためらわなかった。螺旋階段の途中までは問題ないだろう。
階段を登り切るまで特に異常はなかった。
ルルアが避難所へと向かう。明かりを持ち、早足で去って行った。
「ライニングは気配を読めるんだよな?」
『問題ない。』
俺のソート・ジャッジメントと二段重ねで気配察知することで、警戒レベルは上がるだろう。
人はそれほど長い間集中力を保つことはできない。一般的には大人で50分程度だといわれているが、15分周期で波が生じる。
俺は訓練を受けていることもありそれ以上に保つことはできるが、それでもやはり一定周期でムラが出る。
その辺りを聖剣ライニングに補ってもらえるなら、ある程度は隙をなくすことができる。剣での戦いの場合は、九歩の間合いを意識することか多い。
九歩というと個人差はあるが、およそ8メートル。それを割ると死線を超えるといわれているのだ。
魔法や銃なら射程範囲に入ると同じことになる。魔法は気にしなくてもいいが、悪魔が使う術は死角から放たれると即死する可能性もあるため、警戒に警戒を重ねても無駄にはならないだろう。




