第4章 朋友 「Getaway②」
解錠した扉をゆっくりと押し開いた。
少し力をこめる必要があったが、普通の開き戸になっており大した抵抗もなく開いていく。
罠などがないかを調べながら素早く奥に視線を走らせるが、真っ暗で様子は窺えなかった。
「これを。」
ルルアがランタンを手渡してくれる。それをかざしながら危険がないかを再度確認した。
どうやら、ちょっとした個室になっているようだ。
そっと体を扉の向こう側に入れて、灯りが届く範囲に視線を走らせてみる。
ルルアを手で制して、足を前へと運ぶ。
左右は壁で、間口はそれほど広くはなかった。
10メートルほど進むともうひとつの扉があり、そちらには鍵はかかっていない。
そっと開けて奥を確認し、危険がないことがわかると再び足を前へと進めた。
一見して個室に見えたのだが、通路のようだ。
片方はすぐに行き止まりになっているが、こちらは広間に面している壁だろう。
反対側の方へと進む。
扉を開けたことにより風が通り抜けるようになっている。しかし、外からの空気とは違い、冷たい湿気をはらんでいた。
この通路が外につながっているとしても、それはまだ先の方だと感じた。
「この先を確認してくる。」
ルルアにそう言って、ひとりで進もうとすると裾を掴まれた。
「私も一緒に行くわ。何かあった時に、ふたりの方が対処しやすいでしょう?」
何かあった時もひとりの方が対処しやすいのだが、それをいうと余計な不安や疑心を与えるかもしれない。
「わかった。」
共にランタンを持って通路を進む。
普通に考えれば、この先に罠は仕掛けられていないだろう。危険があるとすれば、魔物が入り込んでいるかどうかくらいだ。
外に出れば悪魔や魔族がいる可能性はあるが、簡単に入って来れるようなら既に避難していた場所に到達している可能性が高かった。
都市が悪魔に占拠されてからは、それなりに時間が経過している。そう考えれば、まだこの先にある遺跡か古い建造物は悪魔に発見されていないのだろう。
だからといって気を抜くつもりはないが、可能ならば早く避難している者たちを外に出したかった。
閉鎖された暗闇というのは、予想外に精神的な負荷を与える。加えて、肉親や近しい者を失った者もいるだろう。悪魔の脅威も含めて考えれば、そろそろ恐慌をきたす者が出て来てもおかしくないのだ。
精神的なストレスに耐え切れずに恐慌をきたした者は、扱いに困ることが多い。下手をすると他の者にまで伝播したり、危険を呼び寄せることにもなりかねないのだった。




