第4章 朋友 「救出④」
同じように鍵のかかった鉄扉をさらに二度に渡って解錠する。
そこから30分以上進んだ頃合に空気の流れが緩やかになった。
通路の天井高が2mほどに変化したのを確認する。
匍匐前進を繰り返していた姿勢を解除して手探りで進んでいると、梁のような出っ張りが均一にあることがわかった。まるで炭鉱につながる通路のようだと思いながら、ライターで灯りをつける。
感覚的には真っ直ぐな通路を進んできたが、空間がやや広くなっても方角に変化はないようだ。
壁や天井を補強している木材は経年によりかなり劣化している。壁の構造を見ると均等に立てられた柱に筋交いが施され、通路を作った時代の建築技術の高さが伺えた。
頭上にある梁に頭をぶつけないように気をつけながら周囲の様子を観察する。
古い構造物だが虫や小動物は見当たらず、塵やほこりも積もっていなかった。定期的に清掃する者がいるのだろう。昔の神殿か何かにつながる通路なのかもしれない。
ライターには定期的にオイルを充填していた。容量が低いので点けっぱなしだと数十分もつかどうかだろう。残念ながら松明にするようなものは落ちていなかった。
ライターを消し、再度手探りで進んで行く。
同じ姿勢でさらに1時間ほど進むと、壁や床の材質が変わるのがわかった。
ライターを点けて周りを観察する。
大きな石材で組まれた通路に様変わりしていた。
天井や壁から梁や柱も消えている。
距離を計算しても、まだ都市から出ているとは思えない。
講壇から下りて進んだ方向から察するに、都市を真っ直ぐに跨ぐ道路に沿った地下を進んでいるのだと目星をつけた。
床に傾斜は感じられない。
緩やかな傾斜があるにしても、地中深くに進んでいるわけではないだろう。
天井に梁がなくなったことで姿勢が楽になった。
歩幅を普段のものに戻して先を急ぐ。
ちょうど都市から出るくらいの距離だろうかと感じたときに通路が広くなった。再び明かりを灯してみると、天井高も同じ割合で高くなっている。
壁際に窪みがあったので近づいて見ると、そこには松明か燭台が置かれていた形跡があった。既に誰かが持ち去って何もないが、わずかに残った煤を見る限りやはり定期的な清掃と行き来する者がいたのだと思わせる。
空間の在り方を考えると、先にいるのはひとりやふたりではないのかもしれない。
匍匐前進で進んだ通路では空間が狭すぎて火を使うことを躊躇われたが、床を注視すればその形跡が見つかった可能性があった。
今更なので確認のしようはないが、もし多くの人々が避難しているのであれば今後の行動を考え直す必要があるだろう。




