第4章 朋友 「救出②」
数分後に教会の扉が開いて一体の悪魔が入って来た。
外の物音の確認に出向いたが、他の悪魔たちが集まって来たので戻って来たのだろう。
2~3歩進んだところで血のにおいに気づいたのか、悪魔が立ち止まる。
扉が閉まる瞬間を狙って、肩甲骨の下辺りから上へとナイフを突き刺し捻った。
「かはっ!?」
両足を左上部に跳ね上げて跳び、後ろから腕を悪魔の首に巻きつける。下半身を振り子のよう揺らし、その反動に合わせて上体を捻り首の骨を折った。
刺さったままのナイフを抜き、竜孔流をこめて背中を滅多刺しにして核を破壊する。
悪魔の体を横たえて、外部の気配に動きがないかをしばらく確認した。
むせ返るような血の匂いが不快だ。
万一に備えて口や鼻に血が入らないようにゆっくりと拭う。
サイレントキルとしては及第点だが、人とは違い核を破壊する手順があるために返り血を浴びてしまうのは仕方がない。
しかし、この状態で人の前に立つのはさすがに躊躇われる。
外に不穏な動きがないと判断すると、地下への入口を探す過程で衣服が入ったロッカーを見つけて上衣を着替えた。下半身はそのままだ。
羽織ったのは黒い神父服である。よく混同されるが、神父と牧師は同じではない。宗派の違いもあるが、神父は聖職者で牧師は教職者である。
結婚や性別の可否も違うが、明確なのは神父には服装の規定があるため、教会には予備の服が必ず備わっているという点だろう。
アトレイク教では牧師ではなく神父の敬称を使っており、着替えを拝借することは容易なのである。
少し丈は短いが、カソックという形状なので問題はない。立襟で上からすっぽりと被るような服だ。
教会内部を動き周り、構造的に可能性のある所を探った。
聖像付近を中心に見て回っていると、祭壇がある講壇の端で不自然な空気の流れを見つけた。
注意しないとわからない程度のものだが、下方からのかすかな感覚に違和感を感じたのだ。
悪魔の血を浴びたことにより、湿気を含んだズボンが違和感を伝えてくる。
普通なら感じられなかった程度のものだが、幸いにも良い反応を示してくれた。
講壇に顔を近づけてその違和感が確信に変わる。
そっと空気が出ている部分に手をやり、ゆっくりと力を入れていく。
講壇の一部が横にずれた。
その下に、道路に設けられた集水升のような窪みと薄い鉄板が現れる。暗闇の中で手探りで形状を確認していく。指先で鉄板に触れ、穴があるのがわかったのでそこに指を入れてゆっくりと引き上げた。




