第4章 朋友 「reconnaissance⑭」
「それで、おまえらは何者だ?」
「···先に聞かせろ。あんたはここに何しに来た?」
そう言う男の目には切実な色が浮かんでいた。殺意がなかったことや、俺を捕縛しようとしたことを考えると敵ではない可能性がある。
「質問しているのはこちらだ。先に攻撃をしかけたのはそちらだろう。こちらの疑問を先に片付けてもらいたい。」
「··················。」
回答を拒否しているというよりも、逡巡しているように見える。
「答えられないか。」
俺はアサフェティダの小瓶を他の者の近くに投げつけた。
「はわわわっ!?」
手足を縛っているのですぐには逃げられない。ただ、動きを見る限り縄抜けの技術は持っていそうだった。
何となくだが、こいつらの目的はわかっている。俺の実力の見極めと情報を得るために襲ったのだろう。属しているのがどこかまではわからないが、悪魔と敵対しているが戦力的に手が出せない状況であると思えた。
「あ、あれは強烈だが致死性はないだろう。そんなことで口は割らない。」
男がそう口にした。
表情にも余裕が戻っている。同業者のようなものなら、これくらいの状況判断はできて当たり前かもしれない。
「まあ、いいさ。俺は自分のやるべきことを果たす。あんたらはしばらくここにいればいい。」
この3人に執着する必要はないだろう。俺は踵を返してその場を去ろうとした。
「待て。まさか王都に乗り込むつもりか?」
「····················。」
先ほどまでとは違い、懇願するような雰囲気が出ていた。
「偵察に行くだけだ。」
「なら···俺たちも協力する。」
「素性のわからない者の言うことに取り合うとでも?」
ソート・ジャッジメントに反応はない。
善人ではないが、少なくとも悪意はないと思える。
男は他の2人に目をやった。ひとりはアサフェティダの悪臭で気絶している。意識のある方は男の目を見返し、ゆっくりと頷いた。
「俺たちは、あの国の王家に仕えていた。」
やがて、男は自分たちの素性を話し出した。
南方の小国、ピール王国。
彼らはそこの暗部に所属していたようだ。
定例の周辺諸国への諜報活動から戻ってくると、既に王都は変貌しており見る影もなかったという。
何度か内部を偵察しようとしたが、徘徊する奴らの察知能力が高く、自分たちの力では入り込めないと感じてこの辺りに踏みとどまっていたらしい。
「いつからここにいる?」
「2日前だ。」
タイミング的にグレッグたちとはかち合わなかったようだ。




