第4章 朋友 「reconnaissance⑫」
3人のうち一番体格のいい奴が武器を手にして間合いを詰めてきた。
先ほど気配を放って囮になった者のようだが、突進力はなかなかのものだった。
右手で振り上げた武器を袈裟斬りに落としてくる。
鈍い光を放ったそれには刃が見当たらなかった。
ドーン!
攻撃をかわして間合いをあける。相手の攻撃は、地面をめり込ませて風圧をこちらにまで届けるほどの破壊力があった。
硬鞭や鉄鞭といわれる類のものだろう。
打撃面はおよそ1メートル、握り手は20センチメートルといったところか。片手で難なく振り回しているが、重量は10kgは下らないと思われる。鋼か鉄でできた太い棒に、一定間隔で竹の節のような盛り上がりがあった。
鎧の上から叩きこんでも相当なダメージを与えそうだが、今の軌道だと狙ったのは肩のあたりだと思える。やはり動きを封じて捕らえるつもりだと判断した。
次の瞬間、斜め後ろからまた何かが投擲された。
先程よりもスピードが速い。
横に跳んでその攻撃をかわしたところで、また鉄鞭が襲いかかって来た。
その連携の中で、残ったひとりが何かを呟いているのを目の端でとらえる。
おそらく魔法の詠唱だろう。
鉄鞭と投擲手はおとりなのかもしれない。この3人は個々の技量も高いのだろうが、連携での攻撃を得意としている。初手の時もそうだったが、阿吽の呼吸とでもいうべきコンビネーションを見せてくるのだ。
ただ、一貫して彼らからは殺意を見い出せなかった。
命を奪うよりも捕縛する方が難易度は高い。
鉄鞭による無力化は力技ともいえるが、気配の消し方でこちらの技量を読んでのことなのかもしれない。また、投擲してくるのは小さなナイフの様なものだが、忍者が使う某手裏剣にも似ていた。微かにだが何かの刺激臭がすることから、薬剤が塗られているのかもしれなかった。
そういった瞬時の考察から、このまま長期戦を行うのはこちらにとって厳しいものだと思えた。魔法による捕縛や攻撃に関しては無視してもいいが、鉄鞭による破壊音は悪魔や魔族を呼び寄せるかもしれない。また、あの棒手裏剣まがいの投擲も即効性のある薬剤が使われていれば、かすっただけでも効果が発揮する恐れがあった。
こんなことなら、近接戦用にミスリル製のヌンチャクでも作らせておけばよかったなと少し後悔した。
ヌンチャクは打撃だけではなく、受けや突きにも応用できて投擲にも対応しやすい近接戦闘でのマルチウェポンだったりするのだ。




