第4章 朋友 「reconnaissance⑦」
「彼女やその仲間には助けられました。」
俺はグレッグと名乗ったシェリルの父親らしき男にそう話した。
「シェリルは、ワキンヤンの女と一緒に冒険者をやっているはずだ。どこかで会われたのですな。」
ワキンヤンというとマリアのことを言っているようだ。
「縁があって2人と知り合いました。今は、共にスレイヤーとして活動しています。」
「そうか。元気でいるなら何よりです。」
グレッグが微かに笑みを浮かべた。娘を思いやる気持ちからだろう。良い父親のようだ。
「ところで、タイガ殿はどちらに向かわれるつもりなのだ。」
「南方にある小国に向かっています。」
どういった反応が出るかを知るために、それしか伝えなかった。何かの情報があるなら、反応でわかると思ったのだ。
「やめておいた方がいい。あそこは既に人外どもが支配しておる。」
「その調査のために来ました。悪魔が跋扈しているのではと予想していましたが、やはりそうなのですね?」
「悪魔···そうか、あれが···。」
「悪魔をご存知なのですね。」
「古い文献に過去にはそういった存在がいたと記されていた。我らバズウ族も、何十代も前にはそやつらと戦っていたそうだ。」
やはり、この大陸にもかつては悪魔がいたようだ。
「あなた方はそちらから来られたのですか?」
「いや···我らも依頼を受けて調査に出向いておった。そこで魔族を凌ぐ得体の知れない存在を知ったのだ。」
「依頼···ですか?」
「何代も前からバズウ族はさる国と契約を結んでいる。そこから調査依頼をもらったのだ。」
国名は伏せられたが、おそらく近くにある中規模国家のいずれかから、魔族や魔物の討伐に関する依頼を定期的に受けているのだろう。
「なるほど。ご存知かもしれませんが、今現在南方にいる悪魔はその大半が元人間です。人に魔族の血を与えて魔人化させ、そこにさらに悪魔王の血を注いで悪魔化させたと考えられます。」
「···なんと!?」
本来は魔人化する際に聖女の血が必要だったはずだが、マイク・ターナーのような魔人化なら率は低くても実現するのかもしれない。
魔人化の話については大々的にしたくはなかったが、今のような事態となっては多くの人命がかかっている。この話で事の重大性を理解して持ち帰ってもらった方が、依頼元である国家に人々を避難させる行動をとらせやすいだろう。
幸いにも、彼らバズウ族からは悪しき感情を感じられなかったため、ある程度の事実を打ち明けることにした。




