第4章 朋友 「reconnaissance④」
数十キロほど進んだ地点で、マトリックスを降下させて山の中腹辺りにある平地に着地させた。
人や魔物は見当たらず、道からも離れているので邪魔は入らないだろう。
特に何かがあったわけではないが、キラーベアとの遭遇でHG-02を使ったことがその用途を確定することになった。
ミドルレンジでの攻撃にもと考えていたが、やはり装弾数が1発であるということと複数の悪魔と対峙した時のことを想定すると、あまり器用な使い方はできない銃だと確信した。
HG-02を取り出して銃身を先の方だけ取り外す。標準的なものに取り替えてから、不具合がないかの確認をする。目を閉じながら、想定する使い勝手を動作として叩きこんだ。
取り回しのしにくさや発射時の反動の強さを考えると、この銃はやはりいざという時の切り札として使うべきだろう。
短い銃身でゼロ距離、もしくはショートレンジでの攻撃に使用する。状況に余裕があれば、竜孔流を纏わせて撃つことで悪魔への致命傷を与えることができるはずだ。
ミドルレンジや弾幕をばら撒くような使い方には他の銃がある。銃器類は非常にバラエティに飛んだタイプが揃っているが、重要なのはテーマをしっかりと持たせて状況に応じて使い分けることだ。
一丁を多目的に使用すると、どこかで間隙ができてしまう。本来ならば基にしたトンプソン・コンテンダーは、22口径で暗殺に用いる銃で高い火力で敵を制圧するならもっと装弾数の多いタイプを選ぶべきなのだ。
相手が悪魔だからこそ700ニトロエクスプレス弾を装弾することになったが、多対一の武器ではない。
自分が納得するまでHG-02を取り回してから、空間収納に収める。
製作が完了して試射を通過した他の銃器は、特に実戦テストを必要としていない。それはHG-02のようにパーツ選択によって様々な使い回しができないからこそ、用途への選択肢が狭められているからに他ならなかった。
とはいえ、この世界で最初にこの銃を手にしていれば、それこそ長距離射撃に使えるライフルから近接攻撃用の拳銃としても使いまわしていたかもしれない。しかし、それならば今も無事にはいられなかっただろうと思う。
頭を切りかえ、携行食として持参した軽食を口に入れながら、地図で現在位置を確認しておく。
キラーベアへの実戦テストのために降りたことで、やや経路がずれてしまったことがわかった。
まだ先は長い。
携行食を咀嚼しながら、頭の中で残距離と到着予定時間を計算した。




