第4章 朋友 「reconnaissance②」
道中で野山を駆け抜ける集団を見かけた。
上空を移動中で距離もあったため、はっきりとは確認できなかったが大型の魔物に追われているようだ。
黒い塊が冒険者たちの方に向かって移動している様子が目に入ったのだが、あれは恐らくキラーベアという魔物だろう。
身の丈が5メートル近い巨漢なのに関わらず、時速100kmで走る森の悪魔とさえいわれている。
突進力はもちろんのこと、前足の一振りはオーガと同等かそれ以上の破壊力らしい。冒険者の間では、出会った時の生存率が2~3割程度となるため非常に恐れらているそうだ。
悪魔違いではあるが、そのまま通過する気はなかった。大した手間でもなく、新しい銃器の実戦デビューにもちょうど良かったのだ。
俺は180度旋回して、冒険者とキラーベアの間に割って入った。
木々の上でマトリックスを制止させて機体を空間収納にしまう。俺はそのまま落下するようにして、木の間を縫って着地した。
今回の実戦投入は、トンプソン・コンテンダー アンコールという銃を模した中折式のシンプルな構造のハンドガンだ。
トンプソン・コンテンダー アンコールは、本来は600ニトロエクスプレス弾が使用出来る銃である。これを大型化して700ニトロエクスプレス弾が使用できるように製作してもらった。
当初はライフルの形にするつもりだったのだが、大口径すぎて空気抵抗を受けやすいことから、ロングやミドルレンジでは照準と着弾点との差異が大き過ぎて、実用的には厳しいだろうと思いハンドガンタイプに変更した。
今の俺は強い反動にも耐えられるが、銃というのはダイレクトに反動を受けては次弾の発射にどうしてもタイムラグ発生する。銃身を反動に逆らわずに上へと跳ね上がるのはそのためだといえるのだ。
ニトロエクスプレス弾は象すらも一撃で倒すほど強力だが、標的に当たらなければ意味がない。一撃必中でなければ自らの身を危険にさらしてしまうことにもなる。
そういった経緯で完成したのが、50口径のHG-01を破壊力で凌ぐこのHG-02なのである。
ただ、破壊力が大きいために欠点があり、装弾数は1発でしかない。リム経が22.6mmにもなるため、連装式にするととてつもなく巨大な銃にしか仕上がらないのだ。実際にハンティングで使用されるエレファントライフルも独立した二連装の形状しかないといっていい。600ニトロエクスプレス弾ならパイファー・ツェリスカの5連装式リボルバーがあるが、バレルが短いためライフル使用時程の弾薬性能を引き出せない。そのため、構造がシンプルでロングバレルに修正しやすいトンプソン・コンテンダー アンコールをチョイスして独自の改良を加えたというわけだ。
連射できないために使い所を見誤れば自らを窮地に追いやるのだが、上手く使えば一発逆転の隠し球として機能するだろう。




