第4章 朋友 「karma⑫」
ビルシュが教会の信徒から募って集めた職人は30名を超えていた。
いずれも近郊在住の信心深い者たちばかりだそうだ。
それでも足りない分については各国の協力体制の下、それぞれの国に属する職人を紹介してもらって直接転移で訪れ製作を依頼した。
事後に情報や技術を広げられることのないように、関連性の低いパーツを割り振って作業にあたってもらっている。
分業制の利点はスピードと効率の高さだといえるが、横展開ができないために噛み合わせの悪さなどのデメリットが所々で生じた。
シニタで修正がかけられる分には問題はなかったが、一から作り直しが要求されるものが出てくると作業が遅れることは否めない。
しかし、1週間が経過する頃にはいくらかのプロトタイプが完成し、分解による点検や作動テストをクリアしていく。
クリスが作った試射用の台座で最終テストを行い、完成したものは7割程度。それ以外については問題点を確認してパーツの微調整を行う。酷いものはフレームの強度に問題があり試射でバラバラになることもあったが、フレームの鋳造や素材自体を改めることで解消していった。
予備のパーツについても多めにストックを作っていたので、こういった突発的な内容にも迅速に対処ができたといえよう。
「異常はないか?」
「大丈夫だ。」
10日目を迎える前に、移動手段であるバイクらしきものがプロトタイプとして完成した。
構造剥き出しのネイキッドだが、動作テストができる段階にまで進んだのでシニタ近郊の平原にピックアップして試乗することにしたのだ。
因みに、製作コードはFB-01。
単純にフライトバイクの略であるが、銃器類と似通った名称であるために混同しないようクリスが別に機体名をマトリックスと名づけた。
マトリックスは「生み出すもの」という意味を持ち、クリスなりのこだわりだそうだ。話が長くなるのでその内容については割愛しよう。奴は語りだしたら長いのだ。本当に···死ぬほど退屈だった。ヤバさが限界突破していたとだけ言っておこう。
空飛ぶバイクというと近未来の乗り物のように思えるが、実は前の世界では日本の企業がホバーバイクを開発して既に市販化されている。
時速100kmで飛ぶホバーバイクは、日本円で8000万円近い値がするがドローンの技術を応用しているため理論的には安全な乗り物だといえる。そちらは動力源にエンジンとモーターが併用され、中央の大きな2つのファンで揚力を出し、四方の小さなファン4つでバランスをとるというものだった。




