第4章 朋友 「karma⑪」
「そういえば、もうひとつの魔石は邪気や悪意を断ち切るものだったな。」
移動手段の話がある程度まとまったので、俺は追加の武具について言及した。
「そうだ。気体もしくは液体で使用することを推奨する。個体で削り出して使うことも可能だが、理論値でいえば効果は低くなる。悪魔の核に当てれば効果は十全に発揮するだろうが、竜孔流の付与を考えると他の武具と火力は変わらない。」
「気体や液体なら効果は高いのか?」
「麻痺やある程度の動きの制限には役立つだろう。本来ならもうひとつの魔石でICBMのようなミサイルを作り、弾頭にあの魔石の効果を付与できれば爆発との相乗効果を発揮して大多数に損害を与えられると考えているがな。」
「それはやめておこう。敵が1カ所に集中していれば効果はあるかもしれないが、回避される可能性が高い。悪魔の能力なら、迎撃すらされるかもしれない。」
悪魔は魔族以上に身体能力に優れており、瞬間移動すら使う。さらに魔力や邪気の放出が伴えば、着弾する前に動力部が破壊されて使い物にならなくなる。
「確かにその可能性は高いかもしれん。」
「催涙弾のように、弾頭に充填することはできるのか?」
「聖水に浸しておけば気体として抽出できるからな。あとは濃縮加減を調整すれば可能だ。噴霧状に拡散すればいい。」
因みに、催涙弾には一般的に催涙ガスが使用されるが、ガスといいながら実は気体ではなかったりする。気化しやすいクロルアセトフェノンが主として使用されるのだが、厳密にいえば白い粉末が用いられている。今回の場合は霧状に拡散するよう空中での炸裂を目的としているので、気体よりも液体の方が理想的だったりする。
「連装式のグレネードランチャーに装填して使いたい。」
「麻痺程度の効果でいいなら製作は可能だろう。」
「それでいい。ICS MGL140のリボルバータイプあたりなら、構造や部品の寸法がある程度わかる。」
ICS MGL140は、南アフリカのダネル社が開発した回転式弾倉を持つグレネードランチャーを改良したもので、米軍にも正式採用されている。引き金を引くだけで連射が可能なダブルアクション方式で、装弾数は6発である。敵の数が多いのであればこれを撃ち込んで足止めすることにより、相手の動きにタイムラグを発生させることができるだろう。
「いいだろう。図面は任せた。完成次第、並行して製作に着手しよう。」
「諸々の完成までにどのくらいかかりそうだ?」
「そうだな。新しいギミックを何個か···。」
「それはかまわないが急ぐからからな。2週間でできるか?」
「む、なかなかのドS発言だな。」
「ビルシュから投入できる人員を聞いている。各人の技量にもよるだろうが、クリスなら可能だと思った。」
「···そうだな。私なら可能だろう。」
少し無理な要求だとは思うが、これで変なギミックを組み込む余地は減っただろう。この男は行程管理に関しても優秀だ。余計な作業を増やさなければ期限内に間に合わせるはずだった。




