第4章 朋友 「karma⑧」
「知っていると思うが、ナイトラス・オキサイドは硝酸アンモニウムを融解させると発生する。」
いや、知らんけど。まぁ、話が進まないだろうから知ったフリをしておこう。
「あの小さい魔石が硝酸アンモニウムだったと?」
「そうだ。本来は白い結晶のはずだが、他にもいろいろと含まれているので色についての説明は割愛する。それと、ナイトラス・オキサイドが発生するにも関わらず、魔石の質量に変化は無い。これが何を意味するかわかるか?」
「無限のエネルギー源ということか?」
「さすがだな。」
いや、適当に言ってみただけだ。
「ナイトラス・オキサイドというと、内燃機関のブースト剤として使用されていたよな?」
「そうだ。身近な例でいえば、車のゼロヨンレースなどに使用されるナイトラス・オキサイド・システムが有名だ。NOSやニトロと略されて呼ばれている。」
「もしかして、それを動力として何か移動手段が作れるのか?」
「ふっ、やはり話が早いな。ナイトラス・オキサイドは、エタノールと組み合わせてロケットエンジンの燃料推進剤にも使用されている。」
···ちょっと物騒な話になってきた。
「まさか、それで大陸間弾道ミサイルでも作って、悪魔たちに撃ち込むとでも言うのか?」
「惜しい、実に惜しい!」
なんだそのテンションは?顔が少し狂気に染まってる気がするぞ。
「違うのか?」
「ミサイルという発想もいいが、制御を遠隔でするのは技術的に難しい。」
「···手動ならいけると?」
「いけるな。」
「ミサイルに乗って特攻でも仕掛けろと?」
「惜しい!」
それは遠慮したい。あと、そのハイテンションはやめろ。
「有人ロケットとして開発する。」
「もしかして音速を超えるのか?」
「もしかしなくても超える。」
「減圧や酸素供給はどうする?」
「···························。」
「おい。」
「必要か?」
例え短時間で目的地に着くとしても必要だろう。違う意味で特攻になる。
「あたりまえだ。」
「そうか···それは想定外だった。」
「普通はいるだろ。」
「わかった。少し計画を変えよう。」
視野が狭くなっているのか、俺を人間扱いしていないのかはわからないが発想が怖い。
「そうしてくれ。速度は音速でなくていい。常人が耐えられる速度で調整すれば、減圧も酸素供給システムもいらないはずだ。」
「ふむ。確かにな。」
もっともらしく答えているが、先に考えるべきことだと思う。これまでも、助手だった者たちが激しいツッコミを入れてきたであろうことが容易に想像できた。




