第4章 朋友 「karma⑤」
「プロトタイプの出来はどうだろうか?」
試作品を分解し、再度組み立てていた俺にクリスがそう言ってきた。
「なかなかの出来だ。ただ、これはもう少し引金は重たい方がいい。あと、こちらは微かに干渉している部分がある。弾づまりの危険性があるから、この部分を少し研磨した方がいいだろうな。」
今回のプロトタイプは少し精度が甘いといえた。
ベースとした銃器から考えれば、なかなかの出来栄えではある。しかし、量産ではなくハンドメイドによる作業のため、オートマチック機構にやや不安が残る結果となった。暴発するような荒いものではないが、排莢時に詰まる可能性があったのだ。
「ふむ、微調整することにしよう。魔石を埋め込んだインカムもできている。後ほど渡すからテストしてくれ。」
「わかった。」
俺にも使える通信手段ができたことは大きいといえる。
長距離の通信には適さないようだが、同じ作戦に参加した者は相互通話が出来ることになる。これはサポート面も含めてかなり画期的なことだ。
「あと、ナックルダスターの代わりにこれを用意した。竜孔流の伝達具合も含めて確認しておいてくれ。」
やはりクリスが加わったことは、武器の充実に関する面で大きかった。
「ガントレットか?」
ガントレットとは、手を防護するための防具である。
「そうだ。前腕部から手の甲にかけてを薄いミスリル合金で覆う。攻守のどちらにでも対応できるようにしておいた。」
腕にはめて装着具合を確かめた。
軽くて邪魔にならない。それに指の動きを阻害しないように工夫がされていた。
「軽いな。」
「軽いが強度は鋼の数倍ある。手袋と一体式にした方が密着性は高いが、それだとどうしても耐久性に乏しくなるからな。伸縮性と引っ張り強度の高い素材でベルトを作った。指と手首部分で固定するようにしている。」
手の甲同士を強く打ち合わせて、ズレが出ないかを確認する。強度や衝撃抑制も申し分なく、特に問題はなさようだった。
「オプションも装備してある。」
「オプション?」
「攻撃時に便利な機能だ。」
少し嫌な予感がした。
「何を付けた?」
「詳細はそこに書いてある。」
近くのデスクに簡易なマニュアルのようなものが置かれていた。
「私は忙しいから、詳細はそれを読んでくれ。」
クリスはそう言って、足早に部屋を出ていった。
「·······················。」
俺はマニュアルを手に取った。




