第4章 朋友 「karma④」
あれから1週間が経過していた。
他のメンバーは、各々に連携や研鑽を高めるために日々を修練に費やしている。
ビルシュが各国との協議を経て待機状態となったため、クリスが使用する研究施設や工房の手配が急速に進められた。そのため、既に詳細図面や型枠の成形までを終えていたこともあり、依頼していた銃器類の試作品かできあがってきたのだ。
予想以上に早い対応であるといえるが、悪魔に対抗するためのものであることから各国の多大な支援が入ったことが大きな要因といえた。
各国は王国やシニタでの先の戦いに関する資料を見たことで、ビルシュの言葉に疑問を挟む余地はなかったらしい。加えて、資材や資金の支援だけで済むことから、暫定的な協力体制が組まれることになった。
もちろん、正規の書面による合意書などはまだ交わされていない。国というものは様々な可能性を考慮して公文書を作成する。どの程度の脅威だと認定して、どれだけの協力をしていくかはそれぞれの国で決議が完了した後となる。
その辺りの動きに関して、俺はあまり関心を持っていなかった。むしろ、今回のために製作する銃器の詳細が流出しないよう、ビルシュに求めたのは過剰な干渉を受けない内容にしてもらうことだった。
「その辺については問題ないよ。一度君に嫌疑をかけている訳だし、あからさまな手の平返しは仕方ないにしても、こちらの動きに過剰な干渉をするようなら有事の際の救済は控えるからと言ってある。」
にっこりと笑ってそう言うビルシュの顔には、なかなかの腹黒さが滲み出ていた。
要するに、非公開である情報を探ろうとしたら、悪魔の脅威が迫っても援護はしないよと脅したのだろう。教会のトップとしてそれはどうかと思うのだが、俺が同じ立場でも同じことをしたのは間違いなかった。
叙爵式にテトリアが乱入した件で個人的に疑いを持たれたのは仕方がないとして、俺を推していたアトレイク教や教皇ビルシュの信頼も同じように失墜したのだ。状況的に各国の対応は当然のことだったといえるが、魔族よりも遥かに脅威となる悪魔のことを思えば波風を立てるような真似はしないだろう。
それぞれの国が脅威にさらされた場合に、教会側が戦力支援を行うという体制が築かれてしまったのだ。それを拒否することは国が滅ぶ末路しかない。当然のことだが、今はプライドや国としての権威を主張することが悪手であると理解しているはずだった。




