第4章 朋友 「revisit⑱」
戦闘行為というものに常勝の方程式などない。
銃による戦闘でも近接戦に持ち込めば、無手やナイフを使った攻撃の方が有効な場合もある。また、どれだけ強靭な肉体を持っていたとしても、遠距離からの狙撃による一撃で終わることもある。
加えて、どれだけ強い武器や手段を持っていたとしても、経験値や精神力の差で負けてしまうケースも多々存在するのだ。
こちらの世界では剣や魔法が主流となるが、戦闘における勝利の要因は何ら変わらない。
目の前で繰り広げられた模擬戦も、そういった意味では同じといえた。
時間差で2組に別れて行われた模擬戦は、数の不利をくつがえしてマルガレーテとファフが終始圧倒した。それは持てる力の差だけでなく、経験量や知識の差であり、勝利に対する執着の差であるとも考えられる。
マルガレーテやファフは、戦いの厳しさを豊富な経験から知っている。そして、敗北が死と同意義であることが意識に根づいているのだ。
さらに、遠中距離だけでなく、近接戦まで得意とするオールラウンダーだという点も大きかった。リルとフェリ、そしてマリアとシェリルは共に後衛職の組み合わせである。もっと広い範囲で魔法の威力を制限せずに放ち、戦いにおけるパターンや連携の豊富さがあれば優位に立てたかもしれなかった。
「全然ダメね···。」
「ここまで差があるなんて···。」
荒い息をつきながら悔しがるマリアとシェリルだが、模擬戦の相手をしたファフは満足気だった。
「兆候があるな。」
「兆候?」
「たぶん、2人とも加護の力に共鳴している。もしかしたら、近いうちに準加護者としての力を得るかもしれない。」
「それって、四方の守護者の?」
「そうだ。そうなれば、悪魔であろうと1対1の戦いに遅れはとらないだろう。」
ファフが言うように、模擬戦での2人は戦いの中で何度か覚醒しかけたかのような節があった。
具体的な説明は難しいが、リルやフェリが準加護者として持つ雰囲気に近いものを感じたのだ。
ファフと同じ系類なのが影響しているのか、別の要因なのかはわからない。しかし、肩を並べて共に戦える者が増えるかもしれないことは喜ばしいことだった。
一方、マルガレーテとの力の差を実感したフェリは暗い顔をしていた。比べる相手がおかしいとは思うが、準加護者が2人がかりでも及ばなかったことにショックを受けているのかもしれない。
「フェリさんは精霊に少し頼り過ぎですね。経験によるものでしょうが、もう少し戦いの組み立て方を考えた方が良いかと思います。リルさんは今のままでも後衛として力を発揮できるでしょう。今回は私が優勢でしたが、組む相手のバランス次第でお二人の持ち味が生きるといったところでしょうか。」
4人にとっては先につながる経験だったと思える。これで飛躍してくれれば、こちらの守備については安心できるというものだ。
「よし、次は俺とタイガだな。」
いつの間にか戻って来たアッシュが、傍らでそんなことを言っていた。
やらねーよ。




