第4章 朋友 「revisit⑯」
ファフ達の会話が終わり、これからその実力を見極めるというタイミングで奴が帰ってきた。
修練場の様子を見て察したのだろう。声の届くギリギリの位置から「ちょっと待ったぁ!」と叫びながらこちらに近づいてくる。
フェリはまたかといった感じで赤面して顔を両手で覆っており、リルも深いため息を吐いていた。
俺はめんどくさいのがこれ以上にないタイミングで帰って来たなと思いつつ、進行が遅れないようにSG-01を取り出して弾薬の交換をする。
「おかえり、アッシュ。想定よりも早かったな。」などと言いつつ、SG-01を奴に向けて発射した。
銃口から飛び出たのは、致死性の低いゴム弾だ。
威力はそれなりにあるが、アッシュなら大したケガをすることもないだろう。
そう思った初撃を残像がブレるようなスピードでかわされた。
「はっは、それが通じると思うなよ!」
アッシュは満面の笑みを浮かべながら加速した。
どうやら俺が模擬戦の相手をしてくれると勘違いして歓喜したようだ。
ポンプを操作して、続けざまにゴム弾を発射する。
「あたるかよ!」
アッシュが高笑いしながらSG-01の連射をことごとくかわしていく。
「おおっ!?すげぇぜ、ギルマスっ!」
囃し立てるスレイヤーが現れたことで、アッシュはさらに悦に入ったようだ。
はっはっはっ~と笑いながら剣を抜き出しやがった。
「進行の邪魔をして悪いな。とりあえずアッシュを沈めてくる。」
俺はそう言いながらSG-01を収納して、向かって来るアッシュへとダッシュした。
刹那の時間に間合いが詰まる。
流石と言いたいところだが、あまり調子に乗らせてはダメだと判断し、短期決戦で終わらせるように攻撃手段を講じた。
「さぁ、蒼竜か破竜かどっちを出す?」
嬉々として、アッシュがそう問いかけながら剣を一閃した。
紙一重でかわした俺は、近接用の武器を取り出して応戦する。
「なんだぁ、警棒かよ!?」
失意が混ざった声で問いかけてくるアッシュだが、パッと見で見誤ったようだ。
ガッキィーン!
アッシュの剣と俺の打撃が合わさった瞬間、俺は手もとのボタンを押した。
バリバリバリバリバリィ!
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ー!」
そう、俺が手に持っているのは警棒ではなくスタンスティックだ。
レベルアップしたアッシュなら、死んだりはしないだろうと適当に判断して意識を絶つ。
ドタっ!
痙攣しながら倒れたアッシュの服を掴み、ギルド内に引きずって行った。
「「「「·························。」」」」
修練場はしばらく静寂で包まれることとなった。




