第4章 朋友 「revisit⑥」
黄竜と話をした後に、俺が現実から目を背けたくなったのはその辺りにあった。
可能性の問題とはいえ、神アトレイクがルシファーと同一の存在である場合は、今まで以上に規模の大きい事象に巻き込まれることとなる。
しかし、神アトレイクが神界に戻っているとはいえ、仮に天魔ディアブロもしくはルシファーと同一だとすると、創造神との対立がないのが気になるところだ。
平穏かどうかはわからないが、現状でアトレイクが神界にいるということは創造神との予定調和だった可能性も高まる。
何せ、相手は神の中でも最高位にいる存在だ。いくらアトレイクが巧妙に繕ったとしても、下界にいた限り正体を隠し通せたわけなどあろうはずがないだろう。さらに、黄竜ですら知っている内容を神界の存在が見過ごすとはとても思えなかった。
創造神がアトレイクとルシファーが同一であると知っているのを前提とすると、何らかの目的で容認されていたものだと推測できるのだ。
もう一つの可能性に目を向けると、ルシファーは別にいるということになる。
この場合、もしテトリアがルシファーの転生した姿だとすると、俺自身にも神界とのつながりができてしまう。
それが神たちにとって望ましいことなのかはわからない。しかし、どちらであろうと俺にとってはあまり良い話ではなかった。どう転ぼうとも、人としては生きられないということに繋がるからだ。
ただ、この推測が間違っている可能性も十分にあるとは思っている。これは俺個人の考えではあるが、邪神シュテインがルシファーなのではないかという可能性についてだ。
これまでの情報を整理すると、ルシファーは人間側の味方という風に取れる。しかし、神界と本格的に対抗するために悪魔勢力を掌握しようとしているのではないかという疑いも生じる。
悪魔王となった他の堕天使たちとの決別も、その動きの一端だとも考えられるのだ。
まだ解明できるほどのピースは揃っていないが、いずれにしても俺に待ち受けているのは大きな障害に違いない。
神界を敵に回すか、ルシファーという常軌を逸する敵と合間見えるか。大きく分ければそのどちらかではないかと思えた。
個人的には、神や悪魔たちが勝手に争って決着をつけてくれるのがこの上にない結末だと思っている。しかし、そうなると人間への余波がないとは思えない。さらに、グルルの力を継承した今となっては、傍観者でいることはありえないことでもあった。
確証がないままにあれこれ推測しても仕方がないことだが、レヴィアタンによって黄竜が遺跡に封印されていた事を考えると、情報を隠そうとしたのかその逆であると思えるのだった。




