131話 レイド 魔物襲来③
早朝。
寝ていた俺は人の気配を感じて目を覚ました。殺気や邪気ではない。近くで人の寝息と、甘い香りがしたのだ。
横に温もりを感じて、そちらに視線を移すと···誰かが寄り添って寝ていた。
「···········うそぉ···。」
あわてて昨夜の記憶を探るが、間違いなく1人で就寝したはずた。
薄暗い中でじっと目を凝らすと、それが誰なのかに気がついた。
顔は見えないが寝ていてもボリュームのある胸、女豹のようにしなやかな手足に見覚えがある。
「ニーナか?」
「う····ん~。」
名前を呼んで反応をしたが、そのまま俺の腕を抱き込んで再び寝息を立てた。
柔らかい···おぉ··この感触は···はっ!
トリップしそうになった意識を無理やり引き戻してニーナを起こすことにした。
残念だが····本当に····残念だが···。
「ニーナ、起きて。」
肩を揺らすと眠そうな目を擦りながら何とか起きてくれた。
「ん···タイガ···おはよう。」
「おはよう。····何でここにいるんだ?」
「朝方に蒼龍とバスタードソードの調整が終わったから持ってきたのよ。」
「もしかして徹夜?」
「それに近いかな。早くタイガに渡してあげたくて····ふぁぁ···。」
口許を押さえてアクビをするニーナは、いつものクールな感じとは真逆で新鮮だ。刀の話をする時のギャップも激しいが。
「どうやって入ったの?」
「玄関から~。」
いや、それはわかってる。
「鍵は?」
「私は鍛治士よ。」
それは知ってる···。
「解錠くらいすぐにできる。」
いや、あのね···。
「ついでに合鍵もつくっちゃったぁ~。」
クスクス笑いながら話すニーナ。
「それは···ダメだよな····。」
「えぇ~、ダメなの?」
逆に何で良いんだ?
「私とタイガの仲だし、良いでしょ。」
「俺にもプライベートと言うものがあるぞ。」
「彼女いてるの?」
「いや···いない。」
「じゃあ、大丈夫よ。」
どういう理屈だろうか。
「···一緒のベッドに何で寝てたの?」
「寝不足だから仕方ないよね。」
「襲われたらどうするんだ?」
「タイガに?大丈夫よ。信用してるから···あ、でもタイガなら良いよ。」
いたずらっ子のように笑うニーナ。たぶん、からかっているんだろう。
真面目に相手をしても仕方がないので、起き上がってバスタードソードを手にした。
「柄の部分の調整は完璧だな。鍔のバランスも良い感じだ。さすが。」
注文通りに柄は俺の手に馴染むように調整をされていた。革が巻いてあるのでしっくりと掌に馴染む。鍔は小さくまとめられており、重量バランスも安定していた。
「結構がんばったんだから。それより、タイガって着痩せするのね。すごい体。」
俺は上半身に何も着ていなかった。寝るときはシーツの感触を楽しみたい派なのだ。
「ああ···ごめん。すぐに何か着るよ。」
俺はあわててシャツを羽織った。
「そのままでも良いのに···目の保養になるし。」
ニーナは楽しそうに笑っていた。
社交辞令はいいって。




