第4章 朋友 「revisit⑤」
黄竜の話によると、天魔ディアブロはある時を境にその存在を感じられなくなったそうだ。
それが何を意味するのかは不明だそうだが、完全に消滅したか転生したのではないかと考えられている。
ルシファーとは、光をもたらす者という意味である。そのルシファーが堕天使となり魔王にまで身を落としたのは、一説によると傲慢な人間を消滅させようとした創造神と対立したため、自ら堕天使となったとされている。また、他の堕天使が悪魔王となり世界を混沌へ誘おうとしたことから、そちらからも決別したといわれているそうだ。
黄竜の持論によると、グルルの祖を生み出したのも天魔ディアブロではないかと言っている。
初代のグルルは魔女アラディアナと呼ばれ、悪魔やそれに組する魔族と対抗するために初めて魔法を人間に教えたという。そしてそのアラディアナを生み出した者こそが、天魔ディアブロと闇の女神ディアーナだったそうだ。
ここまでくるとお伽噺のような話になってしまうのだが、これには続きがある。それが神アトレイクとの関係だ。
大天使ミカエルが昇華したのが神アトレイクであり、驚くべきことにルシファーと双子の兄弟にあたるらしい。
この双子というのが真実かどうかはわからない。神アトレイクからはそのような話を聞いたことがなかった。ただ、黄竜がいうには2つの可能性があるとのことだ。
1つは神アトレイクがルシファーと同一の存在ではないかという推論である。これはアトレイクが堕神となってからの下界での動きによるものからきている。しかし、もしルシファーがアトレイクであるならば、今再び神界に戻っているというのが解せない。創造神と対立した背景からも、矛盾しているといえるのだった。
もう1つは···こちらは俺にも関わる話だ。
天魔ディアブロは転生時に自我をなくしている可能性があり、テトリアがその転生した姿ではないかというものだ。これに関しては確証も何もないらしいが、テトリアがアトレイクの見出した人間であることや非凡な才能を持って生まれたことに起因する。
天魔ディアブロが自我をなくした理由として、転生術式の発動中に邪神シュティンの妨害を受けたからではないかという推測も含まれていた。もしテトリアがルシファーの転生した姿だとすると、俺自身も同じ存在ではないかということになる。
古の時代から遡って確証を得ようとしても、これらはすべてベールに包まれているといっていい。どれが正しいかについては見解によっても異なり、そのすべてが真実である可能性を秘めているとしかいえなかった。
俺が真っ裸で目の前にある像と同じポーズをしたことがあるのは、ただの偶然だと思いたいところである。




