第4章 朋友 「preparation for action①」
「ちょっとこれを見てくれないか?」
クリスはそう言って、何枚かの羊皮紙を手渡してきた。
「これは···。」
「新しい武具、主に銃器の構想だ。その中から必要なものをピックアップしてくれ。」
羊皮紙に書き込まれたラフ図面は合わせて8種類。それぞれに特徴の異なる重火器類が描かれていた。
「仕様の詳細は別紙にあるが、すべて前の世界に実在したものをベースとしている。君ならどれがどういったものかの判断がつくと思って、外寸法表記を書き表したものだけを用意した。」
「これがすべて製造可能なのか?」
オートマック機構の小銃や、軍で開発中の重火器までが記されていた。
こちらの設備や技術で実現が可能なのか判断に迷うが、クリスが無理なものをこちらに提案することはないと思い直した。
「もちろんだと言いたいが、それなりの改良と資金は必要だろう。技術については、君が所持しているライフルが製造できる腕があれば問題はないと見ている。難しいのはスプリングの精度と鋳造品の型の成形くらいなものだろう。」
「グリップはどうするんだ?ラバー系の製品は、代替えの素材確保が難しいと思うが。」
「そこは最悪木製で対応できるだろう。ダメならレザーを圧縮して代用できそうだしな。」
そういった技術の詳細はあまりわからないが、この男が口に出して言うことに誇張はない。これまでも大言壮語と思われる発言を耳にしたことはあるが、それらをすべて実現させてきたのを知っている。
「銃身などの素材はどうする?」
「それはこちらの世界で確保できる素材の方が優秀だから問題ないだろう。君もステンレスに似た素材として、ミスリルなどを使用させたんじゃないのかね?」
銃に使用される素材には条件がある。
加工が容易で、かつ衝撃や折れに強く引っ張り強度や硬度に優れているもの。さらに、熱や摩耗に対する耐久性か一定以上は必要だ。
ただの鉄ではなく、合金やミスリルを使用したのはそういった理由からだといえる。
「腕の良い鍛治師に聞いて、用途に最適で入手が可能な素材としてそれらを選んだ。」
「それは正解だな。ただ、銃に使われる素材も様々だ。炭素鋼カーボンスチールやその派生であるクロムモリブデン鋼、ステンレスにアルミ合金にパナジウム、ニオブコルンビウム、チタン、カーボンファイバー、ファイバーグラス、メタルマトリックスコンポジットといったところか。こちらでは合わせるのが難しいものもあるが、クロムモリブデン鋼辺りなら鉄にクロムとモリブデンを添加すれば作るのは簡単だ。さらに威力の高い重火器ならクロムバナジウム鋼辺りが必須だが、そちらも何とかできるだろう。高価だが、ミスリルやアダマンタイトを入手する方が手っ取り早ければ、それから合金を作るのも良い。それに···。」
ただの質問をしたつもりだったが、無意識に地雷を踏んだらしくクリスの独演会が始まってしまったようだ。
素材については、クリスはおそらくドワーフを凌ぐのではないかとすら思えた。




