第4章 朋友 「who the hell are you⑰」
「タイガ様。」
マルガレーテとファフが合流してきた。
「ああ。2人とも無事だったか。」
地底湖からは相変わらず明るい光が放たれている。しかし、黄竜の姿は既になかった。
「何があった?」
俺の顔を見てファフがそう言った。
黄竜から伝え聞いた話が、俺の表情を強ばらせていたのかもしれない。
「先々代のグルルがいた。」
こちらに向かう途中で、マルガレーテはファフから経緯を聞いていたようだ。そこから先のことを、必要と思える分だけ伝えた。
黄竜から聞いた内容のすべてではない。
確証のないものや、俺自身が説明のつかない事については割愛していた。
「邪神シュテインは長きに渡ってこの場に黄竜様を拘束し、魔族たちに監視をさせていたということですか。」
「正確には、かつて悪魔王の一体だったレヴィアタンがそう指示していたのではないかと思う。ただ、具体的な指示をしていたのではなく、有事の際の防壁の役割を担っていたに過ぎないだろう。」
「そうか。それならば、魔族の拠点は別にあるということだな。」
「そうだな。探索はまだ継続になる。」
そう言って、俺は2人を出口に促した。
「何かご心配事でも?」
「いや、話が複雑だったからな。少し頭の中を整理したいと思っている。」
「そうですか···。」
マルガレーテが勘づくほどには表情が冴えないのだろう。
黄竜が話す内容は、衝撃的ではないが消化不良を起こすようなものだった。頭の中を整理したいというのは間違いではない。
それだけ、しこりとして残る内容があったのだ。
遺跡の外に出て周囲の様子を見たが、邪気に関しては平常に戻ったようだ。
魔物の巣窟とならないように入口を厳重に閉鎖し、簡単には入れないようにしておいた。
いずれ誰かが中に入ろうとするかもしれない。しかし、悪魔や宝珠の存在が消えた今となっては、大した問題ではないだろう。
中にある邪気の残滓もそれほど多いわけではない。マルガレーテが常態結界を張ることで、魔物や人間の侵入を防ぐ手立てだけをしておいた。
「他に魔族が拠点とする場所を探すとなると、前と同じように分かれて探索するしかないか。」
ファフが言うように、何かの手掛かりがあるわけではない。こちらに来てから既に半日が過ぎていた。
「一度戻って、明日に再開しようか。このままだとすぐに日が暮れる。」
街中とは違い、薄暗くなると上空から探索してもらったとしても見落としが多くなる。それに魔法で視界を確保できたとしても、それが他から目立ち標的となる可能性もないとはいえなかった。




