第4章 朋友 「who the hell are you⑭」
水から生まれた悪魔、レヴィアタン。
扉の奥にいたそいつは自らをそう語った。
何でも、悪魔の9階級というのがあって、レヴィアタンはその位階3位だそうだ。
「長らくここに留められたが、我の結界を破壊できたのは貴様だけだ。しかも、我が眷属まで瞬殺するとは、なかなか楽しませてくれる。」
ニタァと笑いながらそんな事まで話し出した。とりあえず、水属性の悪魔が作った結界で、邪気にもその効果が付与されていた事がわかった。火属性のファフが辛そうにしていたのは、それが原因ということだ。
「随分と饒舌だな。それと、眷属というのは何の事だ?」
話したがりに見えるレヴィアタンから、少しでも情報を引き出せればと思いそう問うた。
「思えば退屈な日々だった。誰も来ず、我は退屈で狂い死ぬかとも思ったぞ。」
まったく話を聞いてねぇし。
まぁ、眷属というのは多分エムリーのことだろう。エムリーは湖にいた大蛇だが、レヴィアタンというのは確か海中の悪魔だと聞いた事があった。
「以前に、別の大陸近くの海で大きな大海蛇を討伐した事がある。それもおまえの眷属か?」
「肉体を失ったとはいえ、我のような高貴な存在が見張りと封印のためだけに年月を重ねるとはな。あの邪神めが、腹立たしさしか感じぬわ。」
だから、話を聞けよおい。
「そもそもが···。」
長期に渡り孤独だったからか、怒涛のような独り言が始まった。
まぁ、最低限の情報は聞けたので良しとしよう。
俺は竜孔を最大まで活性化させた。途中で気づかれるだろうが、これだけの猶予をもらえたのなら上々だろう。
今のレヴィアタンは悪魔らしい姿をしているが、その体躯はやや透けて見える。実体のない精神体か、邪気による幻影のようなものかもしれない。
俺は体の人中に集めた竜孔流を一気に放出させた。
「なぜ我があのような死に損ないを···ぶふぁ!?」
「····················。」
レヴィアタンは消滅した。
独り言に夢中でこちらが攻撃の隙を窺っていたことにも気づいていなかったのか、それとも敵意がなかったのか。
今となってはわからないが、絶対的強者としての驕りと孤独感が募り過ぎて、意識が疎かになっていたのかもしれない。
あまりにも呆気なさ過ぎて、何かの罠かと思いしばらくの間警戒を続ける。
しばらくして、今いる部屋の先からまたあの咆哮が聞こえてきた。
邪気が薄らいでいく。
俺はソート・ジャッジメントの効果を通常に戻して、周囲に他の邪気が存在しないことを確認した。
少し歩を進めて次の扉の前に立った。
瞬間的に後ろを振り返る。
何もなかった。
レヴィアタンとのやりとりが狐につままれたようにしか感じず、よくわからない消化不良だけが残っている。
しばらくして前を向き、また扉を直視する。
再度振り返って後ろの様子を見た。
「本当に終わったよな?」
俺は既に消え去ったレヴィアタンに対してそう呟くのだった。




