第4章 朋友 「who the hell are you⑬」
残るすべての宝珠を破壊した。
破壊するごとに邪気が薄らいでいく感覚があったのだが、そのすべてがなくなった瞬間に、一つの方角から新たな強い邪気の気配が漂ってきた。
まるで、10の宝珠が合わさったかのような濃い邪気が一点から流れてくる。
「あの扉の方角か。」
ファフが辛そうにしている。
これまでに纏っていた障壁をさらに強化することで、何とか凌ぐことができているようだが蒼白な顔をしていた。
「大丈夫か?」
「ああ。問題ない。」
彼女も四方の守護者から加護を授かった一人だ。
邪気への耐性がないわけではないだろうが、発生源が近い分だけきついのかもしれない。
「悪いが、マルガレーテの様子を見てきてもらえないか?障壁に問題がなければ、一緒に戻ってきてもらえるとありがたい。」
「一人で大丈夫なのか?」
「無茶な真似はしない。それに、属性の問題かもしれないが、俺にはある程度の耐性がありそうだ。」
ファフは俺の目をじっと見ていたが、すぐに「わかった。」と言って外へと向かった。
今のままでは、足手まといになるかもしれないと考えたのだろう。
俺はそのまま石の扉へと向かった。
宝珠を破壊し尽くした後に、扉の方角から邪気が出始めたのは何かの仕掛けがあったとしか思えない。
本来の発生源は扉の奥にあり、五芒星の効果を発揮するために宝珠を設置してそれを媒介にしていたとも考えられる。
これも憶測でしかないが、理にはかなっている気がした。
扉には、先ほどまではなかった刻印が現れていた。
五芒星は5つの要素を図案化できる黄金比の図形として、様々な所で用いられている。
その中でも、目の前にあるものは上下を逆さまにした五芒星。
サタニズムで見られる悪魔の象徴として、カルト教団の事案で記憶として残っている。
その通称名はデビルスターという。
こちらの世界でも悪魔の象徴とされているのかと、少し辟易した気持ちになった。
神的な意味合いを持つ五芒星だが、悪魔には堕神や堕天使もいたという話もあったなと思いつつ、俺は扉の刻印に向けて手を伸ばした。




