第4章 朋友 「who the hell are you⑫」
宝珠の配置と数についてが想像通りだとすると、その位置関係から導き出されるのは五芒星と逆五芒星の2つの図形である。
五芒星というと、個人的に馴染みがあるのは米国防総省だが、日本にも五稜郭や畿内の大五芒星などが存在する。
ペンタゴンや五稜郭は守護の要として有名だが、機内の大五芒星も平城京や京都御所を守るための結界といわれていた。
五芒星は、密教や陰陽といった秘術の世界では結界の魔方陣として有名だ。陰陽師である安倍晴明が好んで用いたことから安倍晴明斑紋や晴明桔梗、セーマンとも呼ばれている。また、イエス・キリストの誕生を告げたベツレヘムの夜空に輝いたのが五芒星とも記されていた。
この世界でも同じ意味合いとして使われているのが前提だが、宝珠は五芒星と逆五芒星を描くように配置され、結界や封印として用いられているのではないだろうか。
宝珠を配置したのが何者かはわからないが、中央にいる存在を邪気により封印、もしくは動けないように結界が張られていると考えるべきかもしれなかった。
しかし、通常の結界や封印というものは、悪しき者や厄災をもたらすものを縛るためにある。
今回のように、邪気で封印をかけるというのは何を意味しているのかがわからない。
遺跡の周辺が魔族の支配下におかれていたことから、当初は中にいるものを守るための結界だと考えていた。しかし、状況からすると結界が破れた際に対処する為か、監視を行う目的なのではないかという憶測まで生まれてくる。
結界を施したのが誰で、何を封じる為に行ったかが焦点となるのである。
今の段階では具体的な確証は何もない事から、ファフにはその考えを語ることはなかった。憶測が間違っている場合は、咄嗟の行動に制限をもたらすかもしれない。
中央の位置からたまに聞こえてくる咆哮に関しても、封じられているものが放っているのか、それを監視する何かの存在によるものなのかもわかっていない。
ただ、そういった可能性を念頭に置きつつ、今はできることを順次こなしていくことに集中するべきだと思った。
思考は時に停滞や躊躇いを生む。そして憶測と事実が混同してしまうと、行動そのものが間違った方向に進むかもしれないのだ。
「何かわかったのか?」
「可能性の一つが頭に浮かんだだけだ。とりあえず、残りの宝珠を破壊してからここに戻って来よう。」
俺はファフにそう答えて、次の宝珠の部屋へと向かう事にした。




