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12話 明かされるアイデンティティー

「なんだ?歯切れの悪い回答だな。」


またおっさんが余計なことを言う。


「記憶喪失らしいぞ。」


アッシュがフォローを入れてくれる。


女性陣ふたりがラルフに冷めた眼差しを送った。


たぶん、このオッサンはいつもこんな感じなのだろう。悪い年の取り方をする奴は結構多い。


俺は決意した。


どうせ元の世界に戻れる訳じゃないし、記憶喪失を語っても矛盾が必ず出る。それに、短いつきあいではあるが、アッシュは信用して良い気がした。最悪の場合は、身体能力にものをいわせて逃げればいい。


腹を割って事実を伝えることにする。


アッシュたちには、次のことを要点だけまとめて明かした。


別の世界で死にかけた上に、爆発に巻き込まれて気がついたらこの世界にいたこと、元の世界では32ヵ国が加盟する世界安全保持連盟(WSR)のエージェントとして非合法組織や危険分子への諜報・工作活動を任務として担っていたこと。


そして、自分がいた世界では魔法も魔力も存在せず、なぜ言葉が通じるのかはまったくわからないということについてだ。


話を聞いた全員が神妙な面持ちとなったが、幸いにも「こいつ頭おかしいんじゃねーか?」という反応を示したのはラルフだけだった。


またコイツか。腹立つ。


「ちょっと魔力測定をしても良いかな?」


沈黙という重たい空気を破ったのはフェリだった。


申し訳なさそうな顔で聞いてくる。


「ああ、かまわない。」


そう答えると、フェリが何かをつぶやきだす。


「本当に・・・魔力がまったく感じられないわ。」


魔力測定の結果をみんなに伝える。


「この世界の人間はみんなが魔力を持っているのか?」


「人間だけじゃないわ。魔族も動物も植物や石だって、物体なら少なからず魔力を持っているはずよ。」


「ひとつ疑問がある。魔力のない相手に魔法を使っても、効果がどうなのかはわからないのか?」


「えっ?」


俺は推測を話した。


「ちょっと待って!その言い分だと、あなたには魔法が効かないってことなの?」


リルの言葉に俺は検証してみたくなった。


「確証はないがな。誰でもいいから、威力を抑えて俺に攻撃魔法を撃ってくれないか?」


「「「「!?」」」」


またもや全員が絶句した。


「本当に良いのか?ヒールが効かないとなると回復はできないぞ。」


「その場合は勝手に何とかする。自分で言い出したことだから責任は持つさ。」


アッシュがこの検証に付き合ってくれることになった。だが、ためらいを拭えずになんども確認してくる。


「あなたは私の命の恩人なんだから、ケガを負ったらちゃんとお世話するわ。放置なんかできない。」


フェリは良い子だ。


ぜひお世話をしてもらいたい。


「ありがとう。優しいんだな。」


その言葉にフェリは顔を真っ赤にして、「そんなこと、当たり前のことじゃない・・・。」と、消え入るような声で囁いた。





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