第4章 朋友 「who the hell are you③」
「結界を張り終えました。しかし、先程までのものとは異なり、魔法による解除は可能です。念のためにプロテクトはかけましたが、上級魔法士になら解けないことはないかと。」
ウォーウルフを殲滅してすぐにマルガレーテがそう報告してきた。やはり元凶を何とかするしかなさそうだ。
「ありがとう。このまま遺跡に入るぞ。」
結界を張った事により、出口を失った邪気はさらに濃密なものへと変わっていった。
あまり長時間とどまっても良い影響はないだろう。
遺跡はそれほど規模の大きいものではない。どちらかというと、地下につながる空間への入り口として作られたもののようだ。
「タイガ様。結界に歪みが出てきました。内部からの邪気が突き上げるような形で術式を崩そうとしているようです。」
「維持する事は難しそうか?」
「この場にとどまり、術式の修復をかけていれば維持はできそうですが。」
中に何が潜んでいるかわからない状況だ。ここでマルガレーテが離脱するのは厳しかった。しかし、結界が破れれば、外部に漂った邪気が魔物を狂わす。距離があるとはいえ、凶暴化した魔物が人里に向かう可能性は考慮しなければならない。
「悪いが、残ってもらっても良いか?できるだけ早急に片付くようにする。」
「わかりました。タイガ様もファフもお気をつけください。」
「頼む。」
想定外だが、ここでマルガレーテと別行動することになった。
遺跡の奥に何が潜んでいるかはわからないが、時間をかけずに対処しなければならない。マルガレーテの魔力は膨大だが無限ではない。それに、魔族などが急襲をかけてきた場合は、結界で足止めすることは難しいだろう。
俺とファフは足速に遺跡の入り口を潜った。
ごぉぉぉぉ。
ファフが手を向けた方角に火焔放射のような魔法を放った。
遺跡の中を進むと、すぐに外の光が届かない暗闇が支配している。
2人とも夜目はきくが、暗い中では何かを見過ごす可能性があった。加えて濃い邪気が漂っているため、魔物がいたとしても気づくのが遅れる恐れがあったのだ。濃い邪気がジャミングの役割を果たし、気配察知やソート・ジャッジメントでの判別を難しいものとしている。
明りとりと見えない敵への牽制を兼ねたファフの火属性魔法というわけだ。
「周囲に生物らしきものはいないな。洞窟にあるような苔の類すら生えていないようだ。」
「邪気の影響だろうな。存在する生物はそれに耐えれるものしかいないのだろう。だからこそ余計に厄介かもしれないが。」
そんな会話を交わしながら、奥へと歩を進めて行った。




