第4章 朋友 「who the hell are you①」
「「「!?」」」
結界がなくなり先に進もうとすると、突然重苦しい気配がのしかかってきた。
濃厚な邪気。
重圧のような気配が遺跡を中心に展開している。
「次は何だ?」
ファフが冷静にそう言う。
あの結界はこれを封印するために作られたものだったのだろうか。
嫌な予感が湧き上がってくる。
邪神シュテインが構築した結界だと思っていた。もしそれが間違いで邪悪な何者かを封じ込める為に別の神的な存在が結界を張っていたとすると、かなり不味い状況かもしれなかった。
しかし、もしそうだとすると、この周辺に魔族が長年蔓延っていた理由が思い当たらない。魔族にとって崇拝すべき存在なら、あらゆる手段を使ってでも結界を破ろうとしただろう。
逆に魔族にとって脅威となるのであれば、早々にここから離れていたに違いない。
情報が足りない今の状況では、答えを見つけることは難しい。
様子を見ながらその何かの出現を待ったが、そこから気配が動くことはなかった。
「前に進むしかなさそうですね。」
マルガレーテが言うように、この気配の正体を探るしかないだろう。濃密な邪気は、普通の者であれば吐き気をもよおすほどのものだった。
気配だけなら良いが、これを放っておいて何かが顕現するなら人間にとっては脅威でしかない。
想像できるのは悪魔王の精神体あたりか。
推測の域を越えない思考は無駄でしかない。下手に決めつけてしまうと、咄嗟の事態に遅れをとる可能性がある。
ファフとマルガレーテは魔法による障壁を、俺は竜孔流で全身に保護膜を張るようにして邪気に直接晒されることを防いだ。
邪気は人の精神に嫌な作用をもたらす。肉体よりも精神に干渉されると厄介でしかないのだ。
周囲を窺いながら歩を進める。
マルガレーテがあの遺跡は墳墓のようだと言っていたことが正しいのかもしれない。封印されているのか埋葬されているのかはわからないが、そういった可能性も頭の片隅に置きながらゆっくりと遺跡に近づいていく。
徐々に濃密になっていく邪気に息苦しさを感じた。
ソート・ジャッジメントの精度を意図的に鈍らせる。鋭敏な状態でいると、それこそ俺の精神への負荷が強く作用してしまう。
前の世界ではこのようなことに気を配ることはなかった。しかし、それはこちらの世界に来てからでも初のことだといえる。
その時に気がついた。
ソート・ジャッジメントの能力をこのように調整したことはなかった。それを無意識化でできるなど考えたことすらなかったのだ。
自身の能力にもまだ未知のものがあるなと思いながら、見えない敵に対して集中することにした。




