第4章 朋友 「berserkr⑱」
ピシピシと結界の頂点部に歪みが生じ、やがてその破綻は全体に広がっていった。
表面を覆う膜のようなものが一瞬浮いたようになり、次の瞬間にバリンという破砕音を響かせて消える。
しかし、それだけでは終わらない。
残ったもう一つの層に対して渾身の竜孔流を注ぎ込むため、両掌を押し出して結界と接触させる。
表層が外部からの攻撃を無効化する高振動の膜ならば、残った結界は通常のものと変わらない気がした。
ただ、それが魔力とは異なる力で構成された神威術に端を発するものかもしれないということだ。
グルルの力も広義では神威術の一つだといえる。
それが相性の問題か根本的な技量の差で通用しない可能性はあった。
しかし、それが躊躇う理由とはならない。
結界に接触するが、やはり堅固な膜だという感触しかない。そして俺の手に触れて消滅しないということは、魔力を使った構築ではないということだ。
やはり、邪神シュテインが作った結界である可能性が濃厚だといえる。
竜孔流による振動で結界の表層に揺れが発生した。
そこにさらなる力を投入することで破滅を生む。
弾かれるような反応がないことを思えば、強度に特化した結界。
局所展開した竜孔流が、やがてその部分の幕を剥離させた。
パァーン!
小口径の銃弾が発射されたような甲高い音が響き、同時に結界が消滅する。
荒くなった息を整えるために深く息を吸い込んだ。
肩が上下動するほどの呼吸。この一連の動きで相当な消耗をしたらしく荒い息が続く。
「タイガ様。」
駆け寄ってきたマルガレーテと目が合いふっと笑う。
「お疲れ様でした。鼻血が出ていますよ。」
クスッと笑ったマルガレーテが俺の鼻の下にハンカチを当ててくれた。
脳へのダメージがあるような感覚はない。毛細血管が破裂しただけだろう。
そう思いながら甲斐甲斐しく鼻血を拭き取ってくれるマルガレーテに礼を言った。
「やはり二重の結界か。」
ファフの言葉に頷く。
「表層はテトリアが使った剣に施されていたものと同じ特性だと思う。高振動による障壁みたいなものだろう。」
高振動や超音波というものは、強いものであればそれ自体が障壁の役割を果たす。投石が粉状になったのはその影響だ。竜孔流が無効化されたのも、その作用が影響していると考えられる。それに二層とも魔力が使われていなかった為に魔法も通用しなかった。
対抗手段がわからなければ、ある種の絶対障壁だったといえただろう。




