第4章 朋友 「berserkr⑯」
ゆっくりと進み、結界の正面で立ち止まる。
練り上げた竜孔流は、体内で2分させて両腕へと均等に流し込むよう軌道を開いた。
竜孔流は気の流れとよく似ている。
強さをコントロールすることで、川のせせらぎや濁流のように様相を変化させられるのだ。
常に体内で制御を行い、外部に放出することもそれなりの練度に達した。
両手を肩の高さまで上げて、肩幅よりも広い間隔を開けて停止させる。
徐々に両方の掌に集まる竜孔流を強めていき、互いに逆回りとなるよう回転させていった。
2つのうねりが同じ力で作用するように微調整を加えていく。
左右がまったく同じスピードで回転するように目を閉じて集中した。
何度か合わせることができたが、ちょっとした気の緩みですぐにずれてしまう事が続いた。
その度に細心の注意を払って動きを合わせていく。
こめかみから流れる汗を不快に感じながらも、雑念と気の緩みにつながるものは意識の外へと追いやるようにした。
何度目かで左右対照となった竜孔流を一定時間保つ事ができるようになった。
そっと息を吐き、それによる揺らぎが出ないと確信できた時に次の段階へと移行する。
竜孔をさらに力強く発動して、両掌への流れを徐々に大きなものにしていった。
互いの動きにブレが生じないまま、大きく、そして力強く回転するにまで至る。
ゆっくりと呼吸を整え、その2つの回転にさらに竜孔流を注いだ。
互いに別方向へと回転する作用で気流が発生し、その間で生まれる衝撃波が衝突して相殺される。しかし、衝突の影響で外へと弾かれたものは空気中に振動を発生させ、別の性質を持つ衝撃波へと変化していた。
結界までの距離をさらに詰め、その衝撃波が大きくなるように竜孔流を流す。
結界の表面が波打つ動きを見せ、まるで共鳴するかのような異音を発した。
離れていた両掌の距離を徐々に狭めていく事で、その反応がさらに強いものへと変化していく。
俺はタイミングを見計らい、両掌を衝撃波で反発するくらいまでに近づけた。
強い衝動が両腕に負荷を与える。
それを押し出すかのように、波動を眼前の結界へと放った。




