第4章 朋友 「berserkr⑩」
魔族の占有地を再訪した。
今回はマルガレーテとファフが一緒だ。
サキナが少し不満を漏らしていたが、有事の際の備えとしてシニタにいてもらうべきだった。
「任せられるのはサキナしかいない」という言葉でお願いしたら、「仕方がないか」と一言漏らしてあっさりと引き下がってくれた。
マルガレーテもそうだが、事あるごとにこういった気を回すのは正直疲れる。
しかし、こちらの事を心配して言ってくれているのは理解できたので、労わりの気持ちを忘れないようにしないといけない。
エージェント時代はお互いに任務だという思いがあったので、こういった風に気を回す事はなかった。これが一般的な人づきあいに必要な処世術だと考えれば、普通の生活もなかなか大変だなと思ってしまう。
例によってそれを聞いていたマルガレーテから仄かな殺気が漂っていた気もするが、気のせいだと思う事にした。
転移で現地に赴き、奥へと足を運ぶ。
ソート・ジャッジメントには気になる反応はない。
少し遠い所に魔物の気配を感じたが、今は気にせず進む事にした。
「この先に何があると思っているんだ?」
ファフがそう言った。
何があるかは検討もつかない。ただ、この地域に魔族が滞留しているのだから、拠点としている所があるはずだ。
「わからない。ただ、魔族は魔物とは違う。それなりに身綺麗にしているし、知能も高い。住居や生活の基盤となる施設があるように思う。」
「そうだな。俺がかつて悪魔との戦いに身を投じていた時も、奴らは人間と同じようなコミュニティを築いていた。違うのは、極端に個人主義で身を寄せ合って生活をしているのではないという点くらいだった。」
「組織だったものはあったのか?」
「組織というよりも、階位による支配的なものだったと思う。悪魔王を頂点に、上位から下位に階層が別れてそれぞれに上の者から支配や管理を受けていたと思う。」
その辺りについては、人間でいう絶対王政に近いものがあるのだろう。権威ではなく、能力や戦闘力による支配なのだとは思うが、上位魔族の存在が同じような身分制度を敷いている可能性を示唆している。
ただ、厳格な統治がされていない事は、これまでの魔族の動きを見る限り明らかだ。個々に気ままに活動し、明確な意図を感じさせるような行動も見受けられなかった。
統率だった動きも目的のある行動も感じることがなかったのだ。
絶対的な支配者がいなければ、散開してそれぞれに勝手に生きていようものだが、同じ地域を拠点とするからにはやはり何かがあるとしか思えなかった。




