第4章 朋友 「berserkr⑨」
改めてクリスに連絡を取り、ソルと一緒にシニタに転移させた。
今後必要になる武器や魔道具の要望を伝え、それを基に必要となる備品や資材をリストアップしてもらう。
「手配するのに少し難がある物もあるけれど、可能な限り何とかするよ。」
俺とクリスの傍でやりとりを聞き、リストアップされた項目に目を通したビルシュはそう答えた。
必要な資金は教会の予算で賄うと言われたが、概算金額を見る限り俺の資産の範囲内だったので負担はこちらがするという内容で話を詰めておいた。
スレイヤーで得た報酬は俺にとって泡銭のようなものだ。教会の予算を削るような真似をするより、自腹の方が精神衛生上もかなり良い。
「では浮いた予算は慈善事業に回すよ。君の名義で寄付金が納められたという体裁にして、孤児院の運営などに使う。そうすれば天剣やberserkrの名声も上がるだろしね。」
教会内部の経理に関しては興味がない。しかし、それで行動への支障を軽減できるなら頷くしかなかった。
こういった手腕を見る限り、ビルシュはやはり優れた管理能力を持っているのだろう。
「わかった。後のやり取りはクリスに任せる。」
「心得た。ソルを補佐として使っても良いだろうか?」
クリスからの返答でソルの名前が出た。彼女の今後を考えると、そういった経験を積ませるのも良いかもしれない。
「本人が望むならそれで良い。ただ、無茶はさせるなよ。」
「それはわかっている。彼女は世情に疎い分、こちらが予期せぬアイデアを出してくるのだ。あの発想力は称賛に値する。」
珍しくクリスが人を褒めている。
この男は頭が良すぎて浮世離れしているが、人を見る目は確かだった。情に流されず、客観的に相手の能力だけを測ろうとする習性を考えると、ソルにそういった才能があるのは間違いないのだろう。
ファフが魔法を習わせていたが、あれは護身のためのものだ。戦いに巻き込むつもりはなかったので、後方支援で能力を発揮してくれるのならそれに越したことはない。
「ソルの事を頼む。まだ三国との話は時間がかかりそうだし、俺は魔族の占有地の調査に向かう。」
「誰かを伴って連絡がつくようにしておいてね。」
ビルシュが言うように、単独で動くと通信手段がないのがネックだった。
「まずはその辺りを解消できる魔道具を作ろう。既存の物を改良するだけだから、そうは手間もかからないはずだ。」
通信用の水晶をどう改良するのかはわからないが、それが使えるようになるのは朗報だった。
単独任務に慣れている身とはいえ、いつでもバックアップが望める環境になるのはありがたい。
「頼んだ。」
俺はそう言って踵を返した。




